ナンバー誌ウェブサイト上に掲載されている、小関順二氏のコラムを拝読した。このコラムはライオンズのリリーフに対する考え方が書かれている記事なのだが、この記事に対し、筆者は強く反論を述べていきたい。ただ、野球アナリストとしての小関氏には敬意を抱いていることと、氏が毎年発行している『プロ野球スカウティングレポート』は、これまで毎年購入してきたことだけは、最初にお伝えしておきたいと思う。

小関順二のコラム
http://number.bunshun.jp/articles/-/218923

このコラムを拝読し、筆者がまず感じたのは、果たして小関氏は個人的な感情なしにこのコラムを書いたのか、という点だ。これに関し筆者は大きな疑問を抱いた。その理由は2011年度版のスカウティングレポートにある。2011年度版のスカウティングリポートを発行する際、小関氏は選手の写真提供を球団側から断られたと記している。発行物に対し提供される選手写真は、プロ野球の電波肖像権委員会が管轄しているようだが、この時の委員会の座長が西武球団だった。スカウティングリポートのページを開いただけでは、この時小関氏側と、西武球団側にどのようなやり取りがあったのかは分からない。しかし小関氏は、電波肖像権委員会に断られたと書いたのではなく、西武球団に断られたと明記している。

この時西武球団が伝えた「写真提供をビジネスとして考えている」という言葉に対し、小関氏は反感を抱いている。筆者はプロのライターでなければ、スポーツ記者でもない。職業は一介の投手コーチだ。そのためマスコミ業界の詳細や、言論の自由に関して詳しいことはよく分からない。だが10年前と現代の時代背景がまったく異なっていることは十分承知している。写真提供をビジネスとして考えている、という意味について、小関氏は球団批評により利益が侵害されると考えているのでは、と記しているが、これは可能性としてはあると筆者は考える。

10年前と異なり、現代はインターネットであっという間に情報が広がってしまう。そのスピードは5年前と比べても、とても比べ物にはならない。ひとたびインターネットでネガティブなことが書かれ、それが注目を浴びてしまうと、その情報は数え切れないほどの人数にシェアされ、情報はどんどん広がっていく。例えば小関氏は、読者にとっては影響力抜群の凄腕アナリストだ。その小関氏がある選手をマイナス評価ばかりしたとする。そうすれば我々読者は「あの選手はその程度なんだな」と、そこで応援することをやめてしまうことだってありうる。「スカウトはなぜそんな選手を獲ってきた?」と思われることだってあるだろう。プロ野球選手は応援され、活躍し、さらに応援され、さらに活躍し、これを繰り返していくことによって初めて一流になれる。この、最初の応援されるというプロセスが侵害される可能性があるならば、それは(球団、及び選手の)利益が侵害されるという考え方は成り立たないだろうか。

さらに言えば、プロ野球球団の株式会社など、ほとんどの場合は小さな一企業でしかない。株式会社西武ライオンズの知名度はもちろんずば抜けているが、しかし企業としての力はソニーであったり、トヨタであったり、大企業と比べることは出来ない。つまり、もし不利益な情報が知らぬ間に一人歩きしてしまったとしたら、株式会社西武ライオンズだけで乗り切る体力などはないということだ。そして西武球団が弱体化してしまえば、困るのは個人事業主である選手たちだ。やり方に関しては現状の方法だけではなく、他にももっと手段はあるのかもしれない。しかし球団が、選手たちの利益を守るという努力、判断は簡単に批判すべきではないだろう。少なくとも小関氏には、プロ球団側の考えも、我々読者に伝わるように記して欲しかった。

さて、話はずいぶんと長くなってしまったが、このような経緯から、果たして小関氏はプロとして、冷静に記事を書いたのかどうかと、筆者は疑問に思ったのだった。

そしてここからようやく本題と入って行きたい。小関氏は、ライオンズはクローサーは軽視しているという趣旨のコラムを書いている。そしていくつかのポジションは、外国人選手に任せると決めているのでは、という予測も。この小関氏のコラムに対し、筆者には同意できる部分はほとんどない。

まずライオンズがクローサーを軽視しているという点については、これはあまりにも酷い決め付け方だ。小関氏は理由として、クローサー候補として有望な新人、つまり大石達也投手をなぜクローサーとしてではなく、先発として起用したのか、という点に触れている。これに関し小関氏は、渡辺久信監督の判断だけでそうしたように書いているが、しかし実際には大石投手自身が、先発転向を希望していたのだ。小関氏はなぜこの点に触れなかったのだろう。

2010年のドラフト会議、渡辺監督は大石投手との交渉権を獲得した直後、「先発投手としてスケールの大きな投手に育てて行きたい」と明言した。恐らくこの言葉のインパクトが強過ぎて、渡辺監督が決め、大石投手を先発に転向させたと思っている方は多いと思う。果たして小関氏はどうなのだろうか。

さらに小関氏は、前述した通り外国人選手に任せるポジションをライオンズは予め決めているとも書いている。具体的にはクローサーとサードと氏は書かれている。だがこれも筆者に対しては、まったく説得力の無い意見でしかなかった。今季に関して言えば、開幕クローサーはゴンザレス投手が務めた。しかしこれは外国人投手だからではなく、ゴンザレス投手が春季キャンプ、オープン戦と抜群の成績を残し、チーム内の競争に勝ち抜いたからこそ抜擢された結果だ。

小関氏は、自分ならば牧田和久投手に頭を下げて、今年もクローサーを担当してもらうとも書いている。しかしこの表現についてはあまりにも丁稚だ。小関氏らしく、もう少しロジカルな表現をしてもらいたかった。例えばセイバーメトリクスなど使い、なぜ牧田投手がいいのか、もしくは牧田投手以外なら誰なのか。今回のこのコラムは、牧田投手が昨季22Sを挙げたから、今年も牧田投手を使えという、表面的な表現しかされていない。

そして確かに小関氏の言う通り、近年ライオンズのクローサーは外国人投手が努めることが多かった。グラマン投手シコースキー投手、そして今季のゴンザレス投手。だが数えればこれだけだ。グラマン投手は先発としては通用しなかったが、リリーフに回ってからは抜群の安定感を見せ、クローサーに伸し上がった。そしてシコースキー投手はリリーバーとして抜群の実績を誇っている。この2人をクローサーに据え、何が悪いというのだろうか?たったこれだけのことで、ライオンズは外国人に任せるポジションを決めていると言い切るのは、プロのアナリストの言葉としてはあまりに物足りない。

これまでのライオンズのクローサーといえば、小野寺力投手、豊田清投手、森慎二投手、西崎幸広投手、デニー投手、石井貴投手潮崎哲也投手、鹿取義隆投手、森繁和投手ら、グラマン投手とシコースキー投手を除けばそのほとんどが日本人選手だ。サードに関してはもう少し外国人選手が多くなっているが、しかしそれも、外国人選手に任せるポジションを決めているという根拠になるほどではない。

さて、ここでもう一度話を大石投手に戻したい。大石投手が加入したことにより、小関氏はコラム内で「多くのファンは、抑えはこれで最低7年は安泰だと思った」と記している。では小関氏自身はどう思ったのだろうか。これに対する筆者の意見は、まったく安泰ではないということだ。そもそも大石投手は大学時代の投げ方により肩を壊している。そしてその肩痛が癒えぬままにプロ入りをした。もし2011年から大石投手をリリーバーとして起用しても、遅かれ早かれ間違いなく肩痛を起こしていただろう。筆者は昨年4月に出演させていただいた番組「プロ野球座談会」でもデニーさんに対しお話させていただいたことではあるのだが、大石投手はプロ入り後、1年目開幕前に肩痛を起こしておいて良かったと筆者は考えている。この肩痛があったからこそ、大石投手は大学時代の投げ方がベストではないことを知り、投手にとって球速は一番大事なものではないことを改めて知ることができたのだ。筆者は改めて断言するが、もし1年目から大石投手をリリーバーとして起用しても、7年も安泰になることはなかった。

今回の小関氏のコラムに対し、筆者はまだまだ言いたいことがある。しかしそれをすべて書いてしまっても切りがないため、あと1つに留めておきたい。小関氏はコラムにて「好意的に見れば、抑え投手は消耗が激しいので、将来有望な若手より取り換えがきく外国人投手にまかせたい、という思いもありそうだ」、「90〜94年のリーグ4連覇に3人のリリーフ投手(鹿取投手・潮崎投手・杉山投手)がかかわったという認識が渡辺監督に希薄なのではないか」と書かれている。コラムを読む限り、渡辺久信監督に取材をしたという印象はない。

繰り返しになるが、渡辺監督はクローサーを選ぶにしてもしっかりと競争をさせている。その上でゴンザレス投手が抜群の成績を残したのだ。そして渡辺監督がリリーフ投手を軽視している?あまりにも馬鹿馬鹿しい見解だ。もはや言葉が見つからない。小関氏のコラムのタイトルは「西武の大苦戦は当然なのか!?リリーフ陣の分析で見えてきた病根」というものだった。しかし分析と呼べるほどの、小関氏らしいデータ分析はなされていない。いや、少なくともコラムの中には見当たらない。もしかしたら我々には適わないような素晴しい分析結果を、我々にもわかるようにごくシンプルに書いてくださったのかもしれない。その真意は筆者には分からない。

これまで筆者は、小関氏のスカウティングレポートをありがたく拝読させてもらってきた。それだけに今回の小関氏のコラムの内容が残念でならない。小関氏にはもっとアナリストとして、ロジカルで鮮明なデータを活用することで、ライオンズのブルペン事情を分析して欲しかった。最後に、筆者のようなプロのライターでもなく、スポーツ記者でもない者が多くのファンを獲得している小関氏対しここまでの記事を書いてしまったこと、お許し願いたい。しかしこれが、筆者の正直な意見であることに間違いはない。





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