「このマン2012」男編1位の『ブラック・ジャック創作秘話 手塚治虫の仕事場から』。今、ノンフィクション漫画が人気の理由とは

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 漫画界の流行が変わりつつあるという。いままでのような作りこんだ世界のストーリーマンガでなく、「ノンフィクション漫画」がブームになっているのだ。

 昨年末発表された「このマンガがすごい!2012」のオトコ編部門1位を獲得した『ブラック・ジャック創作秘話』(作/宮崎克、画/吉本浩二)は、手塚治虫氏の伝記ノンフィクション。そして今年3月に発表された「マンガ大賞」1位、荒川弘氏の『銀の匙(さじ)』も、もともとは同氏のエッセイマンガ『百姓貴族』に構想を得た、限りなくノンフィクションに近い農業高校の学園ものだった。

 こうした「ノンフィクション漫画」が立て続けに高評価を得ている理由は何か。某青年マンガ誌のフリー編集者は語る。

「ノンフィクション漫画は大別してふたつあります。ひとつは実際の事件や人物を扱ったドキュメンタリー系。『ブラック・ジャック創作秘話』などはそれですね。そして、作者の私生活などを扱ったエッセイ系がもうひとつです」

 続けて、同氏はこう分析する。

「ひとつに、近年特に青年漫画の現場ではいかに綿密な取材に基づいた作品を作るかが勝負になっていることです。大ヒットした『宇宙兄弟』などは『これが本当の宇宙飛行士の世界だ』と言われても不思議じゃないほどリアルな描写が多いです。このような作品が増えて、読者の目も肥えてきているんですよね。よりリアルなものを求めた結果、ノンフィクションに行き着いた読者もいると思います」

 なかには、こんなヒット作もあるという。

「最近スゴイと思ったのがamazonのコミックランキングの上位に『ONE PIECE』や『NARUTO』などに交ざり『日本人の知らない日本語』という語学漫画が長期にわたってランクインしていることです。非常に珍しい傾向ですね」

 同作は、日本語学校の先生である作者のエッセイ漫画で、登場する外国人学生たちのキャラクターが個性的で面白いと話題になった。担当編集のメディアファクトリー・羽賀千恵氏はヒットの要因を次のように解説する。

「コミックエッセイとして笑えるのと同時に、楽しく勉強もできる一石二鳥な点が受けたことだと思います。ユニークな外国人学生から伝わってくる日本への愛情も、日本人が読んでうれしくなる要素のひとつではないでしょうか」

 実際、書店でも人気となっているのか。日本最大級の漫画フロアを誇る「MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店」の八木泉氏に聞いた。

「この類いのノンフィクション漫画はたいてい2ヵ所の売り場に置かれるんですよ。例えば、『日本人の知らない日本語』は語学コーナーと漫画コーナー。2方向から読者を獲得できるんです。より多くの人の目につくので、どちらからも火がつきやすい。その可能性にかけて、新刊が毎日のようにどんどん出てるんですよね」

 既存の漫画に満足できない目の肥えた読者のニーズに、「ノンフィクション漫画」が合致しているようだ。

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