親しみのある接客で「町のかかりつけ薬局」を実現する

WOMAN’S CAREER Vol.83

株式会社マツモトキヨシ 依田恭香さん

【活躍する女性社員】ドラッグストアの薬剤師の仕事とは?育児短時間勤務制度を利用して働く依田さん


■接遇を向上し、選ばれる調剤薬局をつくっていきたい

「調剤室の窓口からも、患者さまの症状に合わせてOTC医薬品(※)やマスク・消毒液などの雑貨を提案できる。それが調剤併設店舗も展開する当社で働く面白さ。せっかく調剤窓口だけでなくOTC医薬品、雑貨、化粧品の売り場もある環境にいるのだから、『調剤室は調剤室』と分けて考えるのではなく、いろいろなところに網を張って、患者さま、お客さまのためになることを常に探しています」
※OTC医薬品…「Over The Counter」の略。医師の処方せんを必要とせずに購入できる医薬品。一般用医薬品。

こう話す依田さんは、根っからの接客好きだ。調剤併設店舗で調剤に専念している現在も、常に売り場のラインナップや新商品をチェックし、調剤室に訪れた顧客とのコミュニケーションから症状に合った商品提案を行っている。根本にあるのは、「お客さまの声を真剣に聞いて、何か力になりたい」という思い。そのために、入社当初から親しみやすさを感じてもらえるような接客を心がけてきた。一方で、最初は大学で得た知識が仕事と結びつかないこともあり、戸惑ったという。
「処方せんが必要な医薬品は1つの薬に1つの有効成分しか含まれないことが多いですが、OTC医薬品には複数の有効成分が含まれています。そのため、大学で得た一つひとつの成分に関する知識だけではそれらが組み合わさったときに何に効くのかピンとこず、どうすればお客さまにわかりやすく伝えられるのかわかりませんでした。そんな中、薬剤師の名札を付けていたにもかかわらず質問にすぐに答えられなかった私を『情けないな。薬剤師はいないのか!』とお叱りになったお客さまがいらしたのです。それで一念発起して、OTC医薬品の辞典や関連書籍を読み込み、お客さまの症状に合ったアドバイスができるよう研究しました。次にそのお客さまをお見かけしたときに声をかけ、先日受けた質問への回答をお伝えしたところ、満足していただくことができ、今でもメールのやりとりをするまでの仲になりました」

6年目には調剤併設のドラッグストアに異動したが、ほぼ調剤だけを担当することになり、「職が変わったような衝撃を受けた」そうだ。しかし、気持ちを切り替えて取り組むうちに、調剤にも面白さを感じるようになったという。
「その店舗は小児科のすぐ近くにあったため、1日に対応する70〜80件のほとんどが小児用薬でした。『甘いものが嫌い』『薬の味が苦手』『粉薬は飲めるけれどシロップは飲めない』など、さまざまな要因で薬を嫌がる子どもたちがどうすれば嫌がらずに飲めるのか、試行錯誤していましたね。例えば、『飲めない』と言う子どもが多い薬があれば、プリンやゼリー、ヨーグルトなどを買ってきて、何に混ぜれば飲みやすいか調剤室のメンバーで試飲会を開いて研究するなど。このようにして対処法の引き出しを増やし、目の前の子どもは何が嫌で何ができそうなのかを把握し、蓄積した引き出しの中から提案していくのです。あとからお母さんに『飲めました!』と言ってもらえると、よかったなと思いました」

また当時は、薬局長としてスタッフのシフト調整や処方せんを発行した医師とのパイプ役なども担った。心がけたのは、スタッフの誰もがすべての業務をできるようにすること。自分がいつ異動しても困らないよう、調剤だけでなく、レセプト(診療報酬明細書)の作成や請求、何かあったときの対処法なども共有した。背景には、入社後4年半勤務した調剤併設のホームセンターで売り場チーフを担当した際の経験があった。
「2年目からOTC医薬品と健康食品、化粧品の売り場チーフを任されましたが、責任を感じて仕事を抱え込んでしまっていたのです。商品の売り出し方から売価の決定、売り上げ管理、スタッフのシフト決め、外部の勉強会への参加、そして兼務していた調剤業務…『このままだとつぶれる』と感じたものの、すべて自分でやろうとしてしまいました。そんなとき、エリア責任者であるスーパーバイザーが見かねて声をかけてくれたのです。『自分でやりたいのはわかるけれど、メンバーに役割をふっていかないと。お前の意志をくんでくれる同僚がいないと、運営はうまくいかないよ』と。その言葉で、誰か一人ができても人は育たないし、会社も伸びないことに気づきました。異動当初、調剤室は売り場以上に『この人じゃなきゃわからない』ということが多いように感じたので、情報共有を心がけた結果、私が2週間休んだときも、皆がいつもどおりに現場を回すことができたのです。フォローできるスタッフが育っていたことを実感し、『やってよかった』と思いました」

その後、依田さんは出産をへて調剤の現場に復帰するとともに、接客スキル向上のための研修で講師を務めるCSトレーナーに応募し、1期生として合格。1年目は思うように活動できなかったが、2年目を迎え、新たな目標を見つけたという。
「なかなか活動できなくてもできることは何だろうと考えたとき、調剤の現場の接遇向上に取り組むことだと思ったのです。薬剤師というと、どこか距離のある存在のように感じていらっしゃる方がまだまだ多いのではないかと思います。その中で『町のかかりつけ薬局』を目指すべく、調剤部門を強化している当社が数ある調剤薬局の中で選ばれるためには、患者さまに『この人になら相談できる』と信頼していただける薬剤師をいかに多く育てるかにかかっていると思います。あいさつや笑顔、患者さまの目を見て薬の受け渡しを行うなど、当社の調剤室の接遇はまだまだ改善の余地があります。これまでの経験を生かして、一歩一歩、お客さまから信頼していただけるための手がかりを当社の多くの薬剤師に伝えていければと思っています」