周囲に「もう別れて、他の人を探したら?」と勧められても、「でも、これだけ長く付き合っているし、今さら別れるのも……」

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「10年近く付き合っている彼が、最近ヒドい態度で、トラブルが絶えず、辛い」という女性の相談を受けました。周囲に「もう別れて、他の人を探したら?」と勧められても、「でも、これだけ長く付き合っているし、今さら別れるのも……」とのこと。1人の相手と長く付き合った経験がある人であれば、彼女のこういった気持ちも「分かる」という方が多いのではないでしょうか。
彼女に限らず、人は「付き合った期間」が長い分だけ、その相手に執着してしまう傾向があります。「長く一緒にいて、“情”が湧いているから」といった理由は勿論ですが、これには、あるもう1つの心理が働いている可能性が考えられます。

投資した分だけ、手放せない!? 『サンクコスト効果


それが、『サンクコスト効果』というもの。「サンクコスト」とは「取り返すことのできない、過去の損失」のことを指し、日本語では『埋没費用』と訳されます。そして、過去に費やしてしまった資金や時間、努力などの「損失」を惜しむあまり、他の選択肢があるにも関わらず、その投資を続けてしまうことを、『サンクコスト効果』と呼びます。

分かりやすい例で説明しますね。映画館で、見ている映画が「ものすごく退屈だ」と思っても、チケット代を支払っていると、「最後まで見たら面白いかも……」と我慢して、多くの人は席を立ちません。しかし、それが無料チケットだった場合、「時間の無駄だ」と、途中で鑑賞を止めてしまう人が出てきます。「貴重な時間を有効に使う」という観点から考えれば、映画を見るのを止めたほうが合理的ではあります。しかし、映画を見るのを止めてしまえば、チケット代は「損失」となってしまうので、自分が投資したものを過大評価し、行為を継続しようとする心理が働くのですね。

人気のレストランの行列などでも、並んですぐならば、「やっぱり止めよう」と判断するのは簡単ですが、長い時間並んでいると、「せっかくここまで並んだんだから……」と、途中で列を離れるのはもったいない、と感じるようになります。このように、日常のなかでも、たくさん見られる心理なのですね。

どこで見切りをつける? 「継続」を選んでしまう心理


また、『サンクコスト効果』は、株や会社経営、プロジェクト進行などの際にも、よく引き合いに出されます。株には「損切り」という言葉もありますが、サンクコスト効果が働き、「少しの損失を無駄にしたくないばかりに、もっと大きな損をしてしまった」という例は数多いですね。

そして、恋愛などの人間関係においても、この心理は生じるのです。冒頭の例でいえば、長い間、彼に対し、時間や費用、そして何より愛情をたくさん投資してきたわけですから、それを無駄だった(損失)とは認めたくない。そのため、「信頼できない人なのかも」と感じ始めていても、「付き合いを続けていれば、そのうち心を入れ替えるかもしれない……」と言い聞かせ、現在の状況を続行するほうを選んでしまいがち、ということが起こります。

今の相手と別れて、また別の異性と、また一から関係を築いていく大変さを思えば、「継続」を選びたくなる気持ちも分かります。しかし、心の中に、「彼とやっていくのはもう無理かも」といった“結果”が既に出ているのであれば、早めに決断して未来に向かったほうが、長い目で見るとベター、という場合もあります。「長く付き合ったから」という理由だけで、その相手に執着していると、先々もっと大きなものを失う可能性もある……ということを心に留め、冷静に考えることが大切です。

もしも「投資」をする前でも、今の彼を選ぶ?


『サンクコスト効果』の影響をできるだけ小さくして、冷静な判断をするためには、「過去に、まだ何も投資をしていない段階と仮定して、判断をし直す」ことが有効です。冒頭の彼女の例でいえば、「もし知り合って間もない頃に、彼の性分に気付いたら、自分はどんな判断をしただろうか」と考えてみるのですね。「それでもやっぱり付き合っていた」と思うなら、そこまで好きな相手なのだ、と覚悟を決めてやっていくのも1つの選択肢です。しかし、「最初からそれを知っていたら、彼と付き合わなかったかも……」と思った場合は、どんなに長く付き合っていたとしても、きっぱり別れたほうが、これ以上、傷ついて不幸な時間を過ごす、という新たな損失を増やさなくて済むかもしれません。

いかがでしょうか。「分かっていても、そんなに合理的には割り切れない」のが恋愛の難しいところで、心底辛い経験や痛い思いをした後に、やっと学べる、ということも多いもの。既に思い当たる経験がある、という方も、ぜひ、その「学び」を次の恋愛で活かしていって下さいね。
(外山ゆひら)