ニュースの教室:13限目「トヨタが東北で世界一目指す」 ―再生のスタイル―

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トヨタが7月に宮城県で新会社を作る。
東北の車体組み立て会社、部品製造会社を統合し、
世界一の小型車生産拠点にするためだ。
トヨタが東北と再生への二人三脚を組む意味は何だろうか。

「今後も東北でのモノづくりに力を入れていく」
トヨタの豊田章男社長は震災直後、そう表明していた。
そして震災1ヶ月後には「トヨタ系の部品工場が東北へ集積」
との記事が早くも報じられた。(11年4/23日経)

「東日本大震災の影響ではからずも中断していた、
自動車部品会社の東北新工場の建設計画が再び前進を始めた。
アイシン精機グループや内装部品の大手が、
相次いで新増設工事を再開した。
地域経済復興に向け地元自治体も期待を強めている。
ただ、工事再開のメドが立たない企業もあり、
生産水準の本格的な回復にはまだ時間がかかりそうだ」

しかし年末には「トヨタが東北に新会社を設立」と報じられた。
新会社を、小型車の開発から生産までを一貫して手がける、
総合車両メーカーにまで発展させる構想だという。
その拠点に宮城県を選んだ模様だと伝えられ、
震災にあえぐ地元は一気に沸き立った。(11年12/14日経)

翌日、新会社社長に就任予定の白根武史専務が記者会見をし、
「新会社で世界一の小型車づくりを目指したい」と抱負を語った。
小型車は世界の自動車メーカーが今後の主戦場とする分野だ。
そこで世界一を目指し、それを東北発にするというのだ。

関東自動車、セントラル自動車、トヨタ自動車東北を統合し、
新会社の社名は「トヨタ自動車東日本」と決まった。
本社は宮城県大衡村(おおひらむら)に置く。

関東自動車にあった産学官の技術開発機関の人員の増強。
13年4月には、技術者訓練校「トヨタ東日本学園」の設立。
「東北現調化センター」を新設して地元企業の発掘。

トヨタは矢継ぎ早にこうした構想を打ち出していった。
この動きに呼応して、宮城県の村井嘉浩知事は、
自動車産業振興室の増員など組織改編も検討する、と表明した。
「トヨタが現地調達率を高めるためには、
東北全体でお手伝いすることが重要だ」(11年12/15日経)

そして先週には東北大との、次世代車の共同研究が発表された。
トヨタが持つ自動車の設計や制御のノウハウに、
東北大の電気、情報通信、材料などの先端技術を組み合わせ、
研究成果の試作に地元企業が参画する、というものだ。

電気自動車関連では車輪内蔵型モーターの性能向上や、
プラグなしで充電できる非接触給電スタンドの開発に取り組む。
電気バスを試作し、被災地の公共交通機関に活用する。
走行中の自動車が天候や渋滞の情報を自動的に発信し、
他の車両に伝えるシステムの開発にも着手する。

工場の生産効率化では東北大のロボット技術を応用する。
画像認識技術と高精度センサーを駆使して、
部品を搬送する機械が自律走行するシステムを開発する。

新車販売台数世界一になって、トヨタは組織の脆弱性を見せた。
そのトヨタが東北の再生に並々ならぬ力を貸すことで、
同時に、自らの再生を図ろうとしているようにも見える。

「世の中の多くの人の為に、又お国の為にと言う考えで、
一生懸命に働いてゆけば、食う物も着る物も自然と随いて来る」
トヨタの源流を作った豊田佐吉の言葉だ。

佐吉が「意味のある働き」を求めたように、
トヨタは「意味のある再生」を求めて、
東北との二人三脚の道を選んだのではないだろうか。

文●楢木望
ビジネスエッセイスト/ライフマネジメント研究所所長
『月刊就職ジャーナル』編集長、『月刊海外旅行情報』編集長を歴任。その後、ライフマネジメント研究所を設立、所長に就任。採用・教育コンサルタント、就職コンサルタント、経営コンサルタント。著書に『内定したら読む本』など。