少し暑いぐらいの陽気になり、アイスコーヒーでも飲もうとある喫茶店に入りました。席に着いて間もなく、隣に60歳前後と思しき男性がやってきて、注文をするとすぐにスマートフォンを操作し始めました。

初老の人がスマートフォンを持っているのも、今や珍しいことでもありません。iPhoneでなく、画面がブロック様になっていないのでアンドロイドです。

姪っ子にスマホを教える初老のおじさん

しばらくすると20代の女性がやってきて、初老の男性と向き合って座りました。通信会社のネームが入った小さな手提げ袋からスマートフォンを取り出し、机の上に置きます。

「結局、おじさんのと同じのにしたわ」

どうやら、叔父と姪のようです。

「それがいいよ。これだと、説明もしやすいからね」

ちょっと驚きました。20代の女性の方が、初老の男性にスマートフォンの使い方を教えてもらうのでしょうか。

「まずは設定だな。えーとね…」

当たりでした。一般的に、スマートフォンや新しいIT製品は若者のものというイメージがありますが、決してそんなことはありません。

以前にも書きましたが、いまの60代以上の人のなかには、日本のコンピュータ時代の夜明けに関わっていた人も少なくありませんし、50代の人とてオフィスオートメーションや工場の自動化を実体験してきた世代です。

ついでにいえば、いまの40代前後の主婦のなかには、OAの波のなかでインストラクトレスとして、機器の使い方を講習などで実地で教えていた人がいました。

そもそも、最初にソニーのウォークマンを作ったのも買ったのも、いまの50〜60代です。

最新のIT機器が若者だけのものというのは、大きな誤解です。中高年とて慣れれば使いこなせる人が少なくなく、自分たちが現役だった頃よりもはるかに簡便に操作できることで、逆にのめり込む人も多くいるのです。

さすがは年の功、目が行き届いている

たとえば、ソーシャルゲームを課金で遊んでいるユーザーは、実は中高年がもっとも多いというデータがあります。アクティブユーザーのうち、40代以上だと3割強が課金に応じているというのです。

掲示板サイトなどで問題視されることの多い、射幸性が高いアイテム販売の方式である「ガチャ」も、「大人が大人買いしている」と考えれば、利用が多いのも納得がいくのではないでしょうか。

さて、隣の叔父と姪はアプリをいくつかダウンロードしつつ、順調に設定を済ませているようです。

「ちょっと高いと思うかもしれないけど、こういうセキュリティソフトを入れておかないと、最近はアンドロイド向けのウイルスや偽アプリなんかが多いからね。ややこしいトラブルに遭うことを思えば、保険としては安いもんだ」

さすがは年の功、目が行き届いています。姪っこはカップの紅茶を両手で抱え、肘をつきながら叔父がテキパキと設定していくのを黙って眺めていました。

どうせスマートフォンとはこれからも長い付き合いになっていくのだから、もうちょっと興味を持ってもいいんじゃないか、と思いましたが、余計なお世話ですね。というか、スマートフォンを持っているだけで、ロクに使っていない筆者に言われる筋合いはないに決まってます。(井上トシユキ)