琴子演じるCoccoは、自分を傷つけることで生への希望を味わいながら、我が子への愛の必死さゆえに精神のバランスが取れなくなる母親を演じています。
(C)2011SHINYATSUKAMOTO/KAIJYUTHEATER

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先週7日(土)に公開され、本作を手がけた塚本晋也監督による舞台あいさつでは毎回熱心なファンが訪れたという映画『KOTOKO』 。本作は、主演にシンガーソングライターであり、画家、エッセイストとしても活躍するアーティストCoccoを迎え、第68回ベネチア映画祭において、日本初のオリゾンティ賞(最高賞)を受賞、20分間のスタンディングオベーションに包まれた話題作。つい先日も、フランス、トゥール モヴァス映画祭にて“観客賞”を受賞したとのニュースが。今回はこのように海外でも注目を浴びている本作をご紹介しましょう。

ストーリー


たったひとりで、生まれたばかりの息子大二郎を育てている琴子は、世界が“ふたつ”に見えてしまう。神経が過敏で現実と幻覚の見分けがつかず、笑顔で寄ってくる他人に対しても、自分を睨みつける悪意を持った同じ顔をしたもう一人が目にうつる。時に錯乱し、結果、琴子は幼児虐待を疑われ大二郎は姉の元で育てられることに。彼女が唯一、世界がひとつでいられるのは歌を歌っているときだった。そんなある日、琴子の歌に惹かれた小説家の田中という男が現れ、彼女を追い続けるが……。

琴子演じるCoccoは、自分を傷つけることで生への希望を味わいながら、我が子への愛の必死さゆえに精神のバランスが取れなくなる母親を演じています。劇中では、Coccoが泣き叫び、自らの腕をカミソリで何度も切って血まみれになるシーンなど、彼女の魂の震えを目の当たりにするような場面が何度も登場、その度に観客は琴子から目が離せなくなっていきます。

その一方で、息子への愛情は満ちあふれ、家族とふれあう時の琴子の様子は、観ている側まで顔が綻んでしまいそうなほど。しかし、その愛情が行き過ぎるがゆえにまたもや恐ろしい幻覚を見てしまい……と、本作では琴子がエキセントリックになり取り乱すシーンが多々あるのですが、3.11以降の日本において放射能の影響など、子ども達を必死で守りたいがゆえに何をどう判断すべきか混乱した母親たちの姿とも重なる部分があり、琴子が見せる愛情と怯え、恐れに共感する女性も多いといいます。

業界からも絶賛の声が続々……


本作は、海外での高評価のみならず、業界内でも絶賛の声が数々と寄せられています。(公式サイトコメント欄より)土屋アンナさんは、「彼女の存在好きです。釘付けになりました」(本文はもっと長いです)とコメントし、他、女優の坂井真紀さん、モデルのKIKIさん、漫画家の山本英夫さん、マツコ・デラックスさんを始め、ミュージシャン、監督ら数えきれないほどの声が並び、コメント欄だけでも読み応えアリです。

塚本監督といえば、その独特の世界観に観る側の好みが大きく分かれるともいわれ、どちらかというと男性ファンが多いと思うのですが(あくまで個人的な印象)、今回、Coccoという比類なき才能とタッグを組み、母親への愛情・子どもを育てる女性への絶対讃歌として誕生させた本作は、塚本ワールドを知らなかった女性ですら「自分のドロドロとした感情が洗い流されたよう」という方も。

母親といっても、決してほがらかにいつもニコニコできる訳ではない。この不穏な世の中において、自身の社会との交わりのバランスを取りながら必死でサバイブしていかなければならない女性のもがきや苦しみを描いた本作、生半可な気持ちで観るとパンチを喰らってしまいますが(けっこう描写が激しいのです)、Coccoの震災後の生命の魂に触れ、彼女の歌、踊り、ラストの結末に心を大きく揺さぶられた観客は多いようです(某口コミサイトではかなりの高得点をキープ中)。

現在、映画公開に合わせて“Cocco最新エッセイ『コトコノコ』出版記念コトコノコ展 ”開催中。アーティストCoccoによる映画「KOTOKO」の世界を体感したい方は、ギャラリーアイリーヤードへ(〜4月15日)。
(mic)

『KOTOKO』
監督:塚本晋也
キャスト:Cocco、塚本晋也
企画:Cocco、塚本晋也
音楽・原案・美術 Cocco
2012年4月7日より全国順次ロードショー
(C)2011SHINYATSUKAMOTO/KAIJYUTHEATER