ニュースの教室:12限目「ガソリン高騰」 ―先進国と資源国との闘いのスコア―

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ガソリンが高騰している。主な理由は2つだ。
1は、欧米諸国の対イラン制裁。2は、金融緩和マネーの流入。
一方でガソリン消費が少ないエコカーの売れ行きが好調だ。
ガソリン高騰の影響を、どこまで読み取ればいいのだろうか。

資源エネルギー庁が4日発表したガソリン価格によると、
4月2日現在の東北のレギュラー1L当たり平均価格は、
前週より90銭高い158円40銭だった。
7週連続の値上がりで、東日本大震災後の最高値を更新した。
横ばいだった青森を除く5県で値上がりした。(4月5日河北新報)

アジアの指標である中東産ドバイ原油は、1バレル122ドル台で推移し、
リーマン・ショック前の高値と同水準だ。
直近で最安値の09年1月より5割弱高い。(4月4日日経)

さっそく5月の大型連休を前にした消費控えが心配されている。
みずほ総合研究所の矢野和彦経済調査部長は、
「回復しつつある外食や旅行などの消費を、
手控える動きが起きる可能性がある」と指摘する。

ガソリン高は地方都市を中心に家計を圧迫するという。
家計調査では、11年のガソリン支出は山口市が最も多い。
12万2136円と東京都区部の5.5倍だ。
「代替の交通手段が少ない地方ほど影響が大きい」からだ。

経済産業省によると、11年の国内ガソリン販売量は5673万kL。
直近で最も多かった05年比で8%減になる。
ガソリン需要は15年度までに毎年4%ずつ減るとの予測もある。
5年前に比べ約2割少なくなった給油所も、さらに減少が続く。

ただガソリン消費が少ないエコカーには、弾みがつきそうだ。
ニュース各社の報道によると、
2月の新車販売台数で、ハイブリッド(HV)車は2割を超えた。
またダイハツ工業はガソリン1Lで30kmを走る燃費車を開発し、
マツダはディーゼル車を発売するなど脱ガソリンの動きもある。
これらにより、ガソリン需要減は一層進むと見られる。

米国では、原材料高に苦しむ日用品大手P&Gや、
食品大手のクラフト・フーズが、人員削減を断行した。
その一方では米国でも、エコカー人気は高まっている。
3月の新車販売台数で「プリウス」が単月最高売上げを記録した。

以上に紹介したのは、現在の出来事である。
しかし原油価格の高騰は、過去から続く出来事でもある。
ウィキペディア「原油価格」の項を見れば、
1994年の原油価格は1バレル17.2ドルだったとわかる。
当時日本は原油などを年間4.9兆円で買っていたのだが、
現在では同じ量を買うのに34.7兆円も必要になった。

これはエネルギーをタダ同然で手に入れていた先進国と、
タダ同然では手渡さないように踏ん張り始めた資源国との、
オイルショック以来の40年戦争のスコアだとも言える。

先ごろ米アップルが中国での主要生産委託先と、
労働環境の改善で合意したことも、同じ文脈にあるだろう。
先進国では衣料品メーカーや玩具メーカーを中心に、
多くの企業がタダ同然の労働資源を利用できなくなる。

欧米や日本が、財政逼迫や、産業が黒雲から抜け出せないのは、
タダ同然を許されなくなってきたことにも原因がある。
ガソリン高騰をそのように読み解かないと、
いま目の前で起きている影響に、振り回されるばかりだろう。

文●楢木望
ビジネスエッセイスト/ライフマネジメント研究所所長
『月刊就職ジャーナル』編集長、『月刊海外旅行情報』編集長を歴任。その後、ライフマネジメント研究所を設立、所長に就任。採用・教育コンサルタント、就職コンサルタント、経営コンサルタント。著書に『内定したら読む本』など。