出世のためには男たるものゴマすりも辞さず。いつ見ても自席におらず、気づくと喫煙室で上司に追従している。休日にはゴルフにお供し、もちろん中元、歳暮は欠かさない。今どきこんなわかりやすい人間いるのかと思うなかれ。彼らはゴキブリのごとく、しぶとくしたたかに生き延びている。

速水 ゴマすり男、いますよね。世のなかにゴロゴロ。それはそれでいいんじゃないですか。やって無駄ということはないと思いますよ。見ているとやっぱり「そこまでやるか?」ってくらいの人が出世していく。そのえげつなさも、案外直近の上司にはわからないもの。「かわいいやつだ」ぐらいの認識なんでしょうね。

姫川 偉い人にはありえないほど腰が低く、自分より下の人間には恫喝まがいのことを平気でする。でもその相手がじつは偉い人繋がりだと知った瞬間、臆面もなくゴマすり開始。でもそれで成功するならいいんじゃないですか。

北島 組織でゴマすりは普通でしょう。「君がやれ、俺が報告しておくから」が彼らのモットー。逆に部下がしくじったら「あいつです!」と即刻上司に報告。あっぱれですよね。

姫川 上司への相槌は「さすがですね!」が基本中の基本。聞いているこっちが気恥ずかしくなるぐらい同じヨイショを何度も繰り返す。加えて、自分の弱みをさらけだしたりするのがいいようね。

速水 結局どんな評価システムを取り入れても、判断するのは人間だから、自分に忠誠を誓う犬のポチはかわいいし、そうでない人間を疎むのは当然のこと。

青木 外資にもゴマすりいますよ。むしろトップダウンが大きい分、上層部へゴマをすらずに生きていくことは不可能かもしれません。

彼らが望むゴマすりの形は情報のリーク。情報は上にいくほど濾過されてきれいな情報しか入らなくなる。しかし元のドロドロした原液のような情報を知らなければ、イザというとき致命傷を負うのはトップですから。自分に有利な情報を上げたい部下と、多少のバイアスがあっても情報が欲しい上司。需要と供給の一致ですね。

北島 ゴマすりが、うらやましいのは、彼らって大して仕事の能力がないから失敗を繰り返す。それなのに許される。私なんか失敗を一度でもしようものなら飛ばさてしまうのじゃないかとビクビクしている。

姫川 外資には日本の派閥のようなものはあるの?

青木 派閥のことを向こうでは「ファミリー」と呼んでいます。外資はトップの入れ替わりが早く、短いときは半年で社長が交代になる。トップが変わると、まず前政権の全否定から入るんです。ということは、社長が交代すれば前任者の息のかかった部下は全員飛ばされるということ。そこで誰の側についてきたかは、まさに死活問題です。

私も以前「君はどちらの味方なんだ!」と迫られたことがありますけど、そこでうっかり答えてしまったら最後、言葉が独り歩きしてしまいますから、「いや〜難しいのでよくわかりません」といいつつうやむやに。

皆馬鹿ではないから、ゴマすりながらも、常に転職活動準備はしていますけどね。

姫川 ゴマすれば成功するってわかっていても、同じ土俵に立ちたくないわ。

速水 結局、女性と男性の求めているものって違うと思う。男は「とにかく出世したい」欲にとりつかれているし、それを口に出さない人ほどあやしい。だけど女性は案外職人タイプ。ゴマすってまで上に昇りつめようというモチベーションは低いかもしれない。

北島 みんな冷静になってほしい。どう考えてもゴマすり全員に将来いきわたるポストなんてない。上司だって結果を求められれば、ゴマすり男を切り捨てなくてはならない日がやってくる。そのとき、どんな愛憎劇が繰り広げられるのかしら。

※すべて雑誌掲載当時