今年の2月18日、天皇陛下が心臓バイパス手術を受けられました。心臓という人間の根幹に果敢にメスを入れていくという日本の医療技術の高さ。初めて知って、改めて驚嘆した人も多いのではないでしょうか。現在、日本で心臓病はがんに次いで、2番目に多い死因なのです。

 そんな心臓カテーテルの技術をいち早く日本に取り入れ、推進してきた病院が『「いい病院」への挑戦 患者のためにできること』で紹介されている豊橋ハートセンターです。発足当初は19床しかなかった診療所が、なぜ10年もしないうちに世界に名を馳せる病院になったのか。鈴木孝彦院長を中心とした奮闘ぶりが描かれています。

 本書は『ぼくらの七日間戦争』などの「ぼくらシリーズ」で、今なお人気を博す宗田理氏とその息子、宗田律氏の共著。理氏は自身が76歳のとき、冠動脈が詰まりかけ、鈴木院長の適切な診断の後、カテーテル手術を経て命を救われました。その体験が本書を書くきっかけになったそうです。

 「いい病院」とは、技術もさることながら、そこに人間味がなくてはならないもの。決して年間症例数ランキングの数値や医者の経歴では量れないものだということが本書を読むとわかります。

 鈴木院長のモットーは、「最小の投資と人員で最大限の力を発揮すること」。空いた時間には自ら率先してモップを手にし、掃除をするのだそうです。その代わり、医療機器への出費は惜しまない。また、定期講習会の実施や、海外留学生の積極的な受け入れなど、後進の教育にも力を注ぎます。そんな彼だからこそ、多くの優秀なスタッフが自然と集まってくるのです。

 たった19床の小さな診療所が、世界に名だたる一流の病院へ......。本当にいい病院とは何かを考えさせられるとともに、不可能を可能にした人間の情熱、その影響力に心を動かされます。



『たった19床の小さな診療所から、世界に名だたる一流の病院になったワケ』
 著者:
 出版社:角川学芸出版
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