賞レースにおいてウディ・アレンの名前を聞くのはかなり久しぶりだと思うが、この映画で、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の脚本賞を受賞した。その他、作品賞や監督賞など主要部門にノミネートされ、彼の映画の中で批評的にも興行的にも最も成功した作品となったこの映画。ニューヨークに始まり、ロンドン、バルセロナ、そしてパリと、ウディ・アレンが愛する街への愛がたくさん詰まったロマンティック・コメディだ。


(C) Photo by Roger Arpajou (C) 2011 Mediaproducción, S.L.U., Versátil Cinema, S.L.and Gravier Productions, Inc.売れっ子の映画脚本家のギル(オーウェン・ウィルソン)は婚約者のイネス(レイチェル・マクアダムス)と愛するパリにやってきた。パリに住んで作家への転身を夢見るも、現実主義なイネスからは反対される。ある日、友人夫婦とワインの試飲会に参加したギルは、真夜中に一人で帰宅中に街角で不思議な体験をする。あるはずのない1920年代の社交クラブのパーティに参加し、偉大な芸術家や作家達に紹介される。興奮冷めやらぬまま翌日の夜も同じ経験をする。そしてアドリアナ(マリオン・コーティヤール)という女性と出会う。

94分という比較的短い上映時間の中で、ウディ・アレン・ワールドが全開する。自己を投影したような理想主義で優柔不断なヤサ男の主人公、現実的で物質主義の美人の恋人、芸術に理解のない共和党右派のビジネスマンな恋人の父、似非文化人の妻の男友達、若く小悪魔的なファム・ファタルに、金髪の純粋な少女などなど、彼の映画らしいキャラクターが勢ぞろいして、遊び心たっぷりの物語が展開する。やはり面白いのは、1920年代のパリにタイムスリップしてから。アーティストにとってはゴールデンエイジの年代ゆえ、衣装や舞台美術も美しいし、フィッツジェラルドやヘミングウェイ、ピカソなど、著名な作家や芸術家達が次から次へと出てくるのは、心躍る。アメリカ人のフランスへの憧れとコンプレックスを上手く演出した賢さもあり、程よい加減のスノッブな知的さも、この映画に限っては好印象。わかりやすくて観やすく、楽しいウディ・アレン映画だと思う。

ウディ・アレンの映画は、知的でオシャレな中に、あまりに自己陶酔的で自己反省的な色を帯びることがあって、そこが鼻につくこともある。この作品も若干そんな印象もうけるが、全体としては奇想なユーモアに溢れた優雅で愛らしい映画。観終わった後、むしょうにパリに行きたくなった。(★★★☆☆)

−アメリカの著名な映画情報・批評まとめサイト「ロッテン・トマト」では:93点 

2012年5月26日(土)新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー他 全国ロードショー

配給:ロングライド

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