デザインを考えるとき、過去から引用することは多いですね。それを効果的に活かすためには、その過去のものの持つ背景や思想についてより深く知り、考え、理解することが大切だと思います。
このシリーズは、普段何となく通り過ぎてしまいがちな、デザインに関する事柄からいくつかをとりあげ、その様々な背景について(時には脱線しながら)考えることで、読者の方々の「もっと踏み込んで知りたい」という知識欲を引き出すことを目指しています。

今回、まずひとつめに取り上げるのは
「曼荼羅(マンダラ)」です。
 
 
もそも「曼荼羅」とは

曼荼羅とは何でしょうか。
いろいろな解釈があり
一言で定義できるものではありませんが、
広く解釈するとだいたい
1.複数の要素

2.中心部と周辺部を持った対称的な図形として組み合わされ

3.宗教的な世界観を表しているもの
が曼荼羅である、と言えるでしょう。

もともと「曼荼羅」という言葉は
「円」や「輪」という意味ですが、
曼荼羅は同心円状のもののほかに、
同心方形状のもの、円と方形を
組み合わせたものなども多く見られます。

狭い意味では曼荼羅とは
「仏教、特に密教において
仏の教えや世界観を図解したもの」
となりますが、
本来の意味でいえばそれだけが曼荼羅ではありません。
上に挙げた条件を満たせば、それは「曼荼羅である」と言えるのです。

特に宗教的世界観を表してはいないけれど、
曼荼羅状のかたちをしたもの、というところまで考えると、



わたしたちの身の回りには
とてもたくさんの「曼荼羅状図形」が存在しています



 

(ミズクラゲの画像)©  Marc Samsom
(雪の結晶の画像)
Snowflake and Snow Crystal Photographsより 
 


の回りの至るところに曼荼羅は潜んでいる

先史時代から、人々は様々な宗教的な、あるいは世俗的な事柄を表すのに、
たびたび曼荼羅やそれに似た同心円状などの図形を用いてきました。

密教のほかにはヒンズー教のヤントラ、キリスト教のゴシック教会のバラ窓、
ケルト文化の結び目模様、ネイティブアメリカンのメディスンホイールなどに
それが見られます。








なぜ人はこのように、円や曼荼羅といったかたちに惹かれ、
それを選択するのでしょうか。

生命の根源たる太陽が昇りそして沈んでいく様、
月の満ち欠け、繰り返される生命のサイクル…
そういったものに日々接して暮らしていた人々は、
地球が太陽の周りを回っていることなど知らなくても、
円を描いて回る強烈なエネルギーを感じ、
それに宇宙や神を感じ取っていたから、ということなのでしょうか。

世界中で用いられているとはいえ、
やはりわたしたちが「曼荼羅」といって思い浮かべるのは仏教、その中でも
空海が日本にもたらした密教における曼荼羅でしょう。

次回はその密教における曼荼羅について見ていくことにします。