野田首相は、消費増税法案の成立に「政治生命をかける」としている。

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消費税増税法案が閣議決定された。野田佳彦首相は、「政治生命をかけて」成立をめざす意向だ。衆院解散も辞さない構えをみせるが、解散するには「高い壁」が立ちふさがっている。

内閣支持率も民主党支持率も低迷を続けている。また、消費税増税には、小沢一郎元代表の周辺が採決時の「造反」も示唆して解散をけん制している。さらには、国政進出を準備している大阪維新の会(代表・橋下徹大阪市長)が、「近畿圏で8割」の議席を占める調査結果もあるという情報も伝えられている。

日経調査「民主党支持率、自民と無党派層を下回る」

2012年3月30日、政府は消費増税法案を閣議決定した。国民新党は、「増税反対・政権離脱」の亀井静香代表と、「法案に署名・政権内残留」の自見庄三郎金融相らが対立し、分裂状態となった。

国会採決での「造反」を亀井氏が先取りした形で、小沢グループの増税反対派の中には、採決時の集団造反に向けて勢いがついた、と歓迎する声も出ている。

小沢氏周辺は、造反をちらつかせつつ採決の先延ばしを図りたい考えだ。集団離党には慎重とみられ、9月の党代表選での巻き返しを目指している。今国会会期中(6月21日まで)に解散してもらっては困るというわけだ。

解散が「困る」のは、当選回数の少ない議員が多い小沢グループだけではない。世論調査の数字をみると、民主党自体に厳しい目が向けられている。

3月26日付で日本経済新聞が報じた世論調査結果によると、内閣支持率は34%、民主党支持率は24%だった。自民党の26%、無党派層28%にも及ばなかった。

さらに、民主党内では、橋下・大阪市長率いる維新の会の勢いの前に、選挙先延ばしの気運も広がる。

任期一杯近くまで引っ張り、橋下人気下降を待つ

近畿圏の77議席中、8割弱の60議席を維新の会が確保するらしい――こんな結果が、自民党本部が実施した世論調査で出たという情報を夕刊紙、日刊ゲンダイ(3月26日発売号)が伝えた。「政界関係者」の話として、「大阪府から漏れてきた情報」だという。

夕刊フジ(3月19日)も、「某政党がひそかに」行った調査、として同様の数字を示している。

読売新聞(3月19日)が報じた近畿2府4県対象の世論調査では、次期衆院選の比例近畿ブロックでの投票先は、維新の会がトップで24%だった。以下、自民18%、民主10%と続く。夕刊紙が伝えた「維新が近畿圏8割」の数字は、この読売新聞の数字を小選挙区にも当てはめて計算したもの、という見方もある。

元毎日新聞記者で政治評論家の板垣英憲氏に聞いた。

解散と「橋下人気」の関係について、民主党と自民党とでは大きく見方が分かれている。

民主党で多いのは、解散は2013年夏の任期一杯近くまで引っ張り、橋下人気が下降するのを待とうという意見だ。

一方、自民党では、特に大物落選組や派閥領袖クラスでは、維新の会が具体的に各選挙区の候補者を絞り込む前に解散に持ち込もうという声が大きい。

増税法案の採決も解散も先送り?

民主、自民両党が折り合うのは難しそうだが、消費税増税自体は賛成している自民党が、解散を条件に増税法案の成立に協力する「話し合い解散」の可能性はあるのか。

板垣氏はむしろ、今国会会期末までに増税法案の採決までたどり着かない可能性もあると考えている。法案の閣議決定で大きな山はひとつ越えた。実際に税率があがる2014年4月までにはまだ時間がある。

小沢代表らの反対を前に、民主党分裂の危機を招いてまであせって急ぐことはない、との空気が民主党内にあるというわけだ。そうなれば当然、解散は先送りになる。

ただ、野田首相は今国会での成立を強く目指しており、仮に自民党と「法案を成立させて解散する」と協議がまとまるところまで進めば、「6対4」の割合で解散に踏み切る可能性の方が高いとみる。

もっとも、谷垣禎一総裁は「話し合い解散」に否定的で、あくまで民主党に、増税法案成立前の早期解散を求める方針だ。

一方、板垣氏によると、小沢元代表と橋下市長が協力を深めることで合意したとの情報があり、解散を強くけん制する影響が出る可能性がある。