未来の日本を支える人材を世界に通用するレベルへと高めたい

就職白書2012 | Vol.06

株式会社ワークスアプリケーションズ 牧野正幸さん

未来の日本を支える人材を世界に通用するレベルへと高めたい


■「組織で活躍できる」より、「個人として世界に通用する」人材を

当社のインターンシップは、社会的意義を大きな目的としています。もちろん優秀な人材を発掘・採用するという意図もありますが、それだけでは毎年莫大な労力、時間、コストがかかるこのプログラムを実施する必要はありません。私たちはインターンシップを通じて学生への意識喚起をし、そのうちの何人かが自分の持っている問題解決能力に早く気づき、将来の日本を押し上げてくれるイノベーションを起こしてほしいと思っています。例えば、シリコンバレーには世界的なベンチャー企業がたくさんありますが、日本ではなかなかベンチャーが育ちませんし、社会的に影響を与えるような企業にまで成長することもほとんどない。その差は一体何かといえば、「人材」の差なのです。もちろん、日本にも優秀な学生はいます。しかし、問題は日本における優秀層の学生の大半が、今なおステレオタイプの就職活動を続けていることにあります。また、その一方で、大手企業も高度経済成長期のころと変わらず、「人材」をモノやカネと同様の「資源」としてとらえ、組織型の育成を続けています。学生と大手企業の双方にこうした背景があるため、現在の日本には、「組織の中で機能し、活躍できる優秀層」はいても、「個人として世界に通用する優秀な人材」が非常に少ないという状況に陥っているのです。

もちろん、日本の経済がここまで発展したのは、組織としての高いクオリティーを維持してきたからこそのものではあります。が、今は数年ごとに状況が変化する時代で、次にどんな手を打つべきか誰にも見えていません。現に、日本のお家芸とされてきた分野は次々と新興国に追い抜かれ、日本の国際競争力は確実に低下しています。これからの時代、企業にとって「個人の能力に頼らない組織」を創るよりも、「個人の高い能力を集結」することが求められると考えています。

当社のインターンシップの意義は、学生たちにビジネスフィールドにおける自身の問題解決能力に対し、気づきを与え意識を高めてもらうことにあります。まずは、「自分が成長しなければ会社の中でも活躍できない。ましてや世界で活躍することなどできないのだ」ということを知ってもらいたい。「大手企業ならどんな時代でも会社は生き残る」と言う人もいるかもしれない。しかし、「あなたがその会社で生き残れるかどうかはわからない」ということを学生のうちに教えてあげるべきなのです。未来の日本を担う人材の第一歩として、自分の能力を見極めることの重要さに気づいてほしいと思っています。

ですから、実際のプログラムでは、ひとつの課題に対し、問題解決の種を発見するところから始まり、解決に向かうアイデアの発想だけでなく、それを具現化する実務能力まで、個人の能力のすべてを問う内容になっています。

中国、インドでも選考を実施していますが、現地の学生は日本の学生と比べ、はるかにクリエイティビティが高く、自分で考えて実行できる能力を持っていると実感します。これだけ歴然とした差が生まれているのは、日本の教育そのものが原因と考えています。決まりきったステップを踏む「マニュアル型」の教育のため、柔軟な思考や発想力に欠け、問題解決に向かうクリエイティビティや実行力を育てることができていないのです。

日本で優秀とされる「学歴の高い学生」は、論理的思考能力を持っていますが、それはあくまで「マニュアル型」の能力。用意してきた自己PRや志望動機を面接で好感を持たれるようきっちりと答えることはできますが、発想から実務まですべてを手がける当社のインターンシップではマニュアルは通用しません。マニュアルのない世界に向き合い、最大限の努力をし、学生自身に、自分の中にある「クリエイティブ型」の能力を発見・発掘してもらう。当社としても、通常の面接や筆記試験で見極められない能力を見極められるという点で、非常に効率の良い選考と言えます。2013年卒採用ではインターンシップの選考をメインとし、プログラムそのものも大幅に刷新する予定です。

当社では、インターンシップを通して認められた学生に、複数年有効の入社パスを発行していますが、内定を出すことによる人材の拘束はしていません。また、新卒時に入社意思がなく、ほかの企業に入社した後でも、入社パスの期限内であれば採用しています。入社パスを使うかどうかは、あくまで本人の意思次第のため、「当社に入社する権利」に過ぎません。つまり、学生個人にメリットはあっても、当社におけるメリットはほとんどないのです。しかし、私は「人材こそが、経営における最大要素である」と考えていますし、日本の経済のためには、学生に気づきを与え、若い人材の能力を底上げしていくことに意義があると考えています。たとえ当社に入社することがなくても、このインターンシップで認められた学生が、自分の発想力や実行力を持って社会に何らかの影響を与えるような人材となってほしいと考えています。そして、「入社パスを持つすべての人が世界に通用する能力を持っている」という未来を目指していきます。


■20代は鍛錬の時期。自分が最も成長できる環境を選んでほしい

30歳前の若者は、ビジネスフィールドの上ではまだ小学生のようなもの。20代に経験を積むことで、やがてプロフェッショナルになるのです。だからこそ、就職活動では「自分にとって最も成長できる環境を選ぶこと」が大事だと思います。何も考えず大手企業を目指すのも、「自分にはこの職種が向いている」と決めつけてしまうのも、自分の可能性を閉ざしてしまうことになります。

学生の皆さんにとって、これからの10年間は自分の基礎となる能力を伸ばし、問題解決力を育てていく鍛錬の時期。とにかく、ひたすら考え、できないことにもチャレンジすることで、底力をつけていく。そうすれば、30代にはしっかりと自己判断ができるようになり、自分の向かうべき方向性もあらためて発見できるはずです。

いずれにしろ、世界に通用する人材になるためには、すべてを1人でやり遂げる力が必要だと考えます。そういう意味では、成長途中のベンチャーで働くことは、スキルに加え、考え方や心構えまで学ぶことができるので、どこに行っても役立つ力を身につけられるといえますね。これからの時代のグローバル化も見据え、自分の能力を最大限に伸ばし、世界と戦える人材としての力をつけていくためにも、ぜひ成長できる環境を探してほしいと思います。