物的支援のみならず、企業として被災地特別採用枠で復興を支援

就職白書2012 | Vol.02

株式会社クロスカンパニー 二宮朋子さん

物的支援のみならず、企業として被災地特別採用枠で復興を支援


■企業が動くことをやめれば、日本経済の復興も遅れることになる

当社は全国的にアパレルブランドを展開しており、2011年3月当時の全国店舗数340店のうち、半数以上の184店舗が被災しました。当社の社長・石川は全社員の安否確認、店舗の被災状況確認、今後の経営体力についてのシミュレーションを行った後、迅速に被災地支援の活動を行いました。まずは社内の物流と連絡を取り、被災地に向けて冬物衣料を提供する手配をしました。また、震災の翌日には営業できる店舗の店頭に義援金の募金箱を設置し、お客さまだけでなく、従業員、役員、会社、そして石川自身も含めた寄付により、最終的に1億円を募金するという目標も掲げました。

震災から2週間後、石川自らが被災地に向かい、被災した社員の自宅に支援物資を届けに行きました。石川は、自分の目で現地を見て、一人ひとりの社員から話を聞き、被災地の状況を把握。また、宮城や福島などでリストラが起きているというニュースを耳にしたことともあり、「衣料品や現金を送る支援は一時的なものに過ぎない。東北の人々が自分たちの足で立ち、復興できるようにするためにも、長期支援としての雇用で手助けをしたい」という決断を下しました。そこで、4月中旬の時点で、東北地区特別採用枠として100名の中途採用を決定。当社で社宅を準備し、引っ越し費用やその後の住居費用も負担する形で、できる限りの支援をすることになりました。震災の直後は当社の店舗も被害を受けていましたから、東北での勤務は難しいと考え、まずは他地域の店舗で働く形式を取り、希望者は1年後にUターン就職も可能な体制に。また、仙台で行われたこの特別枠の選考では、社長自らが面接に臨み、被災の状況もすべて聞いたうえで採用を決定していきました。

震災後の不安定な状況の中、採用数を大幅増員することについて、もちろんリスクも考えました。当社自体も店舗が被災し、新規出店計画もストップするなど、先行きが見えない状態でもありましたから。が、復興までにどれくらいの時間がかかるかわからない状況の中、企業が動くことをやめれば経済の復興も遅れてしまう。また、一社がこうした動きをすることで、ほかの企業も連動していくのでは、と考えての決断でした。新卒採用枠においても、2012年卒は予定通り400名とし、さらに東北地区特別採用枠として30名の採用増員も決定しました。当社は成長中の企業ではありますが、以前から砂漠の緑化に取り組むなど、社会貢献を目指す企業理念がもともとありましたので、被災地支援の採用など、自社でできることを行うのは自然の流れだったように思います。

被災地の採用活動においては、「アパレル業界が第一志望ではない」という人も多かったけれど、「仕事がしたい」「働いて家族を支えたい」という意欲の高さを感じました。中途採用に限らず、新卒採用を目指す学生たちも、働くことをリアルに考え、強い気持ちで選考に臨んでいました。また、被災地外の説明会では、「アパレルや接客の仕事で、人の役に立つことができますか?」という質問が多くありましたね。これまでは、ふわっとした職業観をもとに企業や職種を選ぶ学生も多くいましたが、震災を機に「自分が現場で何をできるのか」を考える方向に変化したように思います。「具体的ではないけれど、とにかく社会貢献がしたい」という使命感を持つ学生が増えたと感じますね。


■「自分自身がどう仕事にかかわっていきたいか」を考えてほしい

「2013年卒の採用活動が2カ月ほど遅れている」というニュースを聞いて、焦りを感じている学生も多いと思います。が、就職をするのは1年も先のことですし、長い期間があるので、いたずらに焦る必要はありません。仕事や企業について、学生のころはどうしても「この企業に入りたい」「この仕事をやりたい」など、ピンポイントで決めてしまいがちですが、「自分自身がどう仕事にかかわっていきたいか」を考えれば、選択肢もいろいろあるはずです。その企業で何をしたいか、それを常に考えていたいと思えるかを大事にしてください。そういう意味では、これから伸びていく会社を選び、会社と一緒に成長しながら自分の力を伸ばしていく方がいいのではないかと思います。

2012年卒の採用活動では、被災の経験から働くこと自体への意欲が高まった学生や、ボランティア活動を通じて社会貢献がしたいと考えるようになった学生、逆に、被災しなかったことで「自分はこのままでいいのだろうか」と悩む学生など、実にさまざまな学生に出会いました。それぞれに価値観が変化する時代の中、社会の一員として心豊かに生きていくためにも、自分自身の意思を持って働ける場を探してほしいと思います