では、都内のどこに住めば安心なのか。
 本誌3月22日号で取り上げた、防災科学研究所が公表する「J-SHIS」の表層地盤の増幅率を基に作成した“地震に強い”ランキングを参考にすると、最も地盤が安定しているのは多摩市だ。
 以下、上位を列挙してみると、八王子市、稲城市、武蔵村山市、国立市、立川市、日野市、昭島市、小金井市、府中市、町田市、東大和市、国分寺市、東村山市、調布市、西東京市、清瀬市、大田区、墨田区、台東区、北区、渋谷区、杉並区、東久留米市、新宿区、小平市、三鷹市、練馬区、目黒区、板橋区、世田谷区、中野区、武蔵野市となる。

 列挙した中でも比較的購入価格も安い都下の中古マンションは、平均価格が3316万円となっている。前出の都内の不動産業者が言う。
 「都下の遠隔地では、やはりいざという時、帰宅困難になる。勤務先に歩いて帰れる所というと、調布、三鷹、練馬、台東、大田の同心円の圏内の物件です。この中で価格も比較的安いというと板橋。東武東上線沿線で立地は良いのに、70平米台で2000万円台の物件が揃っている。練馬も同様です」

 一方、交通至便の目黒はどうかというと、築15年、70平米、駅から10分以内で条件を絞ると、4500万円前後はする。調布も京王線沿線のイメージのせいか、60平米台で4500万円が相場。世田谷などの高級住宅値はさらに高額だ。しかし、大田区まで足を延ばせば、京急線沿線に60平米台で2000万円後半の物件がごろごろしている。ただ、「京急沿線は津波がきた時、水没する可能性もある」(前出の不動産業者)という。
 そこで条件を下げて三鷹を見てみると、75平米、築15年の物件が3500万円前後。北区浮間には築15年、66平米2500万円の物件もある。台東区はどうかというと、浅草周辺では60平米築15年3500万円というのが相場だという。とはいえ、やはり浅草周辺も津波の危険性はある。

 都内に住むAさん(47)は現在、浦安市内にある大規模マンションの78平米の物件を4000万円で売りに出しているが、なかなか買い手がつかないという。
 「マンションの管理組合では震災後、携帯用のトイレを配るなどのケアはしっかりしていました。だけど、ベイエリアはもう怖い。売れないのは、同じような物件が3300万円くらいなので比べられるからだと思います。武蔵野市の新築マンションは同じ条件で4500万円。700万円下げて安心を買うか、それともここに住み続けるか…。子供はまだ学齢期なのでとても迷っています」

 そんな悩みも持たない、地震も津波も気にならないという人は、沿線を変えて葛西駅付近(江戸川区は表層地盤の増幅率がワースト1)の築年数が20年以上の中古マンションが大きく下落しているという。
 「管理の行き届いた大手のマンションでさえ値下がりしているんですから当然です。3LDK(60平米)で2500〜2700万円出せば十分購入できます。葛西にとどまらず、東西線の各駅にはそうした中古マンションがかなりありますよ。今は穴場ともいえます」(地元の不動産屋)
 葛西から都心までは地下鉄で20分あまり。格安で交通至便のマンションを買いたいという人にはお勧めだろう。

 もし直下型の東京湾北部地震が発生すると、ベイエリアは震度7の激震に襲われる可能性がある。となれば、築年数の浅いマンションでも、中には阪神淡路大震災の時のように倒壊する鉄筋コンクリートの建物もあるかもしれない。であれば、分譲マンションはやめて賃貸にしようかという人もいるが、その点は住宅ジャーナリストがアドバイスする。
 「今の超低金利はこの先も続くでしょう。しかも、賃貸は子育て家族の需要を満たす間取りタイプが揃っていないので、やはり購入を勧めます」

 東日本大震災から1年が経った矢先、3月14日に千葉県東方沖を震源とするM6.1(千葉県北東部と茨城県南部で震度5強)の地震が起きた。
 首都圏直下型を想像させる地震が続くなか、あなたはどの選択をするか。