「学バス」で東大へ、小さな路線バスの旅

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皆さんは「学バス」をご存知でしょうか。都心を走る都営バスには、系統番号に「学」の字を付した路線がいくつかあり、これらを「学バス」系統と呼びますが、いずれも学生の足として駅と大学を結ぶ路線で、上野、御茶ノ水、目白、高田馬場、渋谷、恵比寿の各駅から、それぞれ東大、日本女子大、早大、国学院大、東京女学館などを結んでいます。もちろん路線バスですので、学生でなくとも利用できます。運賃が170円と、一般路線より安い設定なのが特徴です。今回はこの「学バス」系統のうち、昭和24年から運行という歴史を持つ上野駅〜東大構内間の[学01]系統にスポットを当て、東大キャンパスへの小さな路線バスの旅を楽しみたいと思います。

上野駅の正面玄関を出ると、入谷口方向への狭い通りに面した目立たない場所に、[学01]の乗り場があります。待っている人を見ると、学生らしき姿は無く、お年寄りばかり。学バスのはずがなぜ、と思いますが、その理由は後ほどわかります。やがて私とお年寄りでほぼ座席の埋まったバスは、ゆっくりと上野駅を発車しました。

バスは昭和通りを南下し、御徒町から春日通りに入ると、湯島天神裏の切通坂を上がり、間もなく東大の湯島側の玄関口となる龍岡門に到着します。「龍岡」という名が印象的ですが、この付近の旧町名が龍岡町で、高台に起立した町の意味から「立岡」と呼ぶようになり、これを縁起の良い「龍」の字に変えたといわれます。
2_竜岡門を入るバス
龍岡門から東大キャンパス内に入ったバスは、医学部付属病院前の道路をしばらく進むと、間もなく東大病院前バス停に止まります。ここで私を除くすべての乗客が下車。それでお年寄りばかりの理由もわかりました。この路線、現実には東大への学生の足ではなく、東大病院への外来患者の足として重宝されているようです。これでは「学バス」ではなく「通院バス」ですが、時代の変化と共に、バスの役割も変わってきたということでしょう。

私一人を残したバスは、病院前をそのまま直進し、終点の東大構内バス停に到着します。ここにはロータリーがあり、上野駅への[学01]、御茶ノ水駅への[学07]のそれぞれが、小休止を兼ねて発車を待っています。キャンパス内にちょっとしたバスターミナル機能があるとは、さすがに東大です。
3_東大構内バス乗り場
さて、ここから東大キャンパス内をぶらぶらしてみましょう。東京に長年暮らしていますが、東大に縁のない人生を送っている私にとって、東大を歩くのは初めてです。まずは東大のシンボル、安田講堂へ。バス停から理学部1号館脇を抜けると、すぐに安田講堂の裏側に出ます。写真等ではお馴染みの建物ですが、こうして間近に見ると、空に突き上げるような赤褐色の塔のフォルムに、しばし目を奪われます。講堂正面の芝生広場には、保育園児の遊ぶ姿も見られ、公園にいるかのようなリラックスした気分にさせてくれます。
4_安田講堂
講堂南側の林へ足を踏み入れると、三四郎池です。思いのほか幽邃な雰囲気に驚かされます。本来はその形状から「心字池」と呼ばれましたが、漱石の『三四郎』発表後、いつの頃からか三四郎池の名が定着したようです。東大キャンパスの大半は加賀藩前田家上屋敷の跡地であり、池はその庭園の名残となります。
5_三四郎池
東大は戦災による被害が少なかったこともあり、戦前からの建物が多く残り、文化財として価値のある建造物も少なくありません。これらを細かく見ていくと、とても一日では回りきれないほどですが、三四郎池周辺では、本を並べたようなフォルムが印象的な総合図書館なども見どころでしょう。

東大散策のお供に、お薦めの本をご紹介します。
東京大学本郷キャンパス案内』木下直之/岸田省吾/大場秀章 2005年・東京大学出版会
建物だけでなく、歴史や自然、銅像などあらゆる視点で解説した東大散策案内の決定版です。その中に、キャンパス内のマンホール蓋についてのコラムもあり、「帝大」の文字が残るマンホール蓋が紹介されていますが、・・・ようやく私も付属病院付近でひとつ見つけましたので、記念にパチリ。
6_帝大マンホール蓋