前回に引き続き、勝ち残るリアル営業「ヒアリング」のお話です。ヒアリングで最も重要な事項に「クレームのヒアリング」があります。ネット営業では意外に軽視されている部分でもあり、リアルとの差がつきやすい一面もあるのです。

まず、ネット通販における私のクレーム体験をお話ししましょう。もう2〜3年前になりますが、とある大手ネット通販サイトで、私が購入予約をした数量限定商品が発売日を過ぎても送付されず、2週間ほどして「商品が確保できませんでした」と通知が来るという事態が発生しました。

対応打切りを一方的に宣告した某有名サイト

当初私は、発売日にリアル店舗で買ってもいいと思ったのですが、発売日失念の恐れもあったため、確実に確保できるであろうネット予約を選択したのです。

発売日にはリアル店舗で見かけたので、そこで買ってしまおうかとも思ったのですが、発売日のキャンセルはルール違反と考えました。予約の段階で「商品が確保できない場合がある」というアナウンスは一切なかったこともあり、ネットからの商品送付を待っていたわけです。

当然、リアル店舗では発売数日後に完売。1週間ほどしてから、通販サイトから「商品確保が難しいので、万一の場合はご容赦願います」という旨のアナウンスが2度ほどあり、3度目には「商品確保断念」の通知が。私は怒り、このままでは済ませないと思いました。

ところが、そのサイトにクレームを送るための「お問い合わせ」ページを見つけるのにまずひと苦労。ようやく見つけてメールを投げかけるも、「申しわけございません」はあったものの「当サイトのやり方」を一方的に説明するのみ。

私の主張は、「商品確保が難しいとの判断は、最低でも発売日にはできていたはずであり、その段階で確保できない可能性は通知するべき。それがあればこちらは別のルートで商品確保ができた。完全にそちらの落ち度であり、リカバリー策を提示せよ」というものです。

結局、メールやり取りの末、先方からの3回目のメールで「我々の事情をご理解いただけないのは残念。今後本件に関するお問い合わせをいただいても、これ以上の対応はできない」と、一方的にクレーム対応の打ち切りを宣告されてしました。

「クレームは最高の営業先」と気づいた新入社員

私は、ネット営業の限界を見た気がしました。なんとももったいない。ここでしっかりクレーム対応したなら、私はこのサイトのヘビーユーザーに化けたかもしれないのに。

それができないのが、コスト優先のネット営業の限界なのでしょう。お問い合わせページが見つけにくいのも、人的コストのかかるクレーム対応は極力避けたいという意思の表れとしか思えません。

一方、リアル営業のクレーム対応にはこんな話があります。高卒でコピー機販売代理店の営業職に就いたAさん。入社早々のまぐれ当たりもあって予想外に実績があがると、いきなり先輩からのイジメの世界が待っていました。

新人の思わぬ活躍で上司からハッパをかけられた先輩営業マンたちは、「勉強になるから」という理由でクレーム対応をすべてAさんに押し付けたのです。

精密機器類のクレームは軽重の差はあれど、その数は実に多く、彼はほとんどまともな営業活動ができない日々が続きます。周囲はシメシメと思ったでしょう。しかし彼は数か月後に、営業所でトップの成績をおさめることになるのです。

「クレーム先は最高の営業先であると、しばらくして気がつきました。こっちが何も問いかけなくとも、いろいろな情報を一方的に教えてくれるのですから、どうすればお客さまが怒らずに喜ばれるのかが手に取るようによく分かりました」

普段なら相手の懐に入る「カットイン」を経て、ようやく引き出せる本音や具体的な要求が、黙っていても先方からどんどん出てくるわけです。確かに、最初は感情的な物言いかもしれませんが、こんなチャンスはめったにありません。

クレームへの対応で関係を太くする

Aさんは、こうも言っていました。

「お客様のクレームという確実なニーズに最優先でお応えすれば、確実に関係は太くできます。そうすれば、怒りのハイテンションは長くは続かないものです」

しかもクレーム対応は、本社などにも厳しい条件をぶつけやすいし、対応の優先順位が高いので営業はかえって動きやすい。

「こんな最高のヒアリング営業はないです。私は今でもクレーム電話がなると、『チャンス到来!』と思わずほころびますよ(笑)」

このAさんは「クレームヒアリング営業」で実績を伸ばし続けて、遂に大手コピー機メーカー販売代理店で全国トップにまで上り詰め、その後独立して今や自身で成績優秀販売代理店を経営する社長になっています。

Aさんの話を聞くと、ビジネスモデルの違いや社内システム上の諸事情はあれど、クレーム対応を十分にできないことはネット営業最大の弱点であるようにも思えてきます。その弱点を積極的にカバーするクレームヒアリング営業にこそ、「勝ち残るリアル営業」の道があると思います。(大関暁夫)