イチローが4安打。それも嬉しいことではあったが、観客が一体となって試合を盛り上げたことが本当に感動的だった。オープニングセレモニー、東北の被災地で亡くなったアメリカ人女性について語るナレーションが、デレク・ジーターだとわかったときにぐっときた。ビールは1杯だけ飲んでいたが、アメリカという国の率直な善意が琴線に触れたのだ。

イチローは、オープン戦のときからテンションが高いと思っていたが、この日は格別だった。

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最初の打席はぼてぼての遊ゴロ、これが安打となり調子に乗った。2打席目は深い当たりの遊ゴロ。ペニントンの肩にイチローの足が勝った。3打席目はセンターへゴロで抜けるヒット、4打席目は左翼ライナー、そして延長11回、5打席目はバットを投げだすお得意の打法でセンター前。二塁のダスティン・アクリーを返した。1打点。
この日の4安打の何割かは観客席が打たせたのだと思う。熱狂的というより本当にあたたかい声援に、イチローは奮い立っていたのだと思う。塁へ出ても走る気満々だった。

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最後の打席では、オリックス時代の懐かしい「イ、チ、ロー!」の掛け声がドーム内を駆け巡った。みんな本当に彼の帰還を待っていたのだ。
イチローの開幕戦の成績

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開幕戦4安打は初。スロースターターといわれるイチローだが、開幕戦はこれまでも.307と打ってはいた。しかし、今回は格別だったのだろう。

SEAもOAKも貧打線。安打が続かない。当たっていたのは一昨日までのエキシビションゲームで安打が出ていた顔ぶれだけ。期待のスモークも、モンテロも音無し。OAKではセスぺデスが7番でMLBデビュー。3打席目にセンターオーバーの二塁打を打っている。
SEAのエース、フェリックス・ヘルナンデスはランナーを度々得点圏に進めたが、ここからの粘りが素晴らしかった。迫力のないOAKの打線からはいつでもゴロや三振が取れるという感じだった。

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ダスティン・アクリーは良く振れていた。ライナーで目の覚めるような本塁打、そして決勝のタイムリー、イチローとの連携が取れているようだった。
8回、アクリーが凡退して守備位置につくときに、キャップとグラブを持ってきてやったイチローが、アクリーと少し話し込んでいた。師弟関係のようなものができているのかもしれない。

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川崎は元気にノックを受けていたし、試合中も左翼のカープのキャッチボールの相手を務めるなど動き回っていたが、出番はなし。正遊撃手ブレンダン・ライアンは8回にペニントンのゴロを素早く送球してアウトにした。さすがに守備は達者だ。またOAK二塁ウィークスの守備も見事だった。

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鉦も太鼓もラッパもない観客席。観衆は投打の動きに反応し、どちらのチームのファインプレーにも大きな拍手を送っていた。客席が一つ一つのプレーに集中していたから、小さなファインプレーやハッスルプレーにもみんなが気がつくのだ。

応援団で騒ぐのも野球の楽しみの一つだろうが、じっくりと野球を見る楽しみもあるとしみじみ思った。
野球場で聞こえる音は、歓声や手拍子など、人間が体を使って出す音だけで十分なのではないだろうか。

野球はいいものだと本当に思った。私はこの試合を一生忘れないだろう。