【原発都民投票】34万筆の署名は、都民の原発に対する関心の高さを示す

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原子力発電所の立地や建設、そして稼働などについては、国と電力会社と立地先の自治体が決めてきた。例えば、福島第1原発で言えば、国と東京電力、福島県、そして立地先の大熊町と双葉町などが話し合い、合意した上で物事が進んできたのである。

そのうち「住民」が直接関わることができるのは、立地先の市町村のみ。昨年3月の福島第1原発での事故を振り返れば自明のことであるが、事故の影響は広範な地域にわたることを考えれば、「限られた人々によって原発に関する事柄が決められていいのか」という話が出てくるのは当然であろう。

そんな中、「みんなで決めよう! 『原発』都民投票」という運動が盛りあがっていることをご存じだろうか。原発の存在や稼働について、限られた人々がそれ決めるような仕組みを見直そうという目的ではじまった運動である。具体的には、まず署名を集め、都議会に条例の制定を直接請求し、可決されれば投票が実現する。

地方自治法によれば、条例を直接請求をするために必要な署名は、その自治体の有権者の1/50以上となっている。東京の場合は22万人分の署名が必要なのだ。そして、署名集めは3月24日に終了した。同日の時点で署名数は34万筆となり、法廷署名数の約22万筆を大幅に超えることとなった。

この署名数を見れば、都民がどれだけ原発に対して関心を持っているのかがうかがえる。原発の稼働に関する住民投票をおこなう意義については、署名活動の請求代表人である社会学者の宮台真司さんが3月22日の記者会見で簡潔に説明しているので、以下で紹介する。

まず、「これは脱原発条例ではない」ということ。条例によって「原発推進であれ反対であれ住民の意見を住民投票で表明することを可能にする」。さらに、「住民投票は『世論調査による政治決定』の如きポピュリズムではな」く、「住民の民度を上げることで代議制民主主義の弊害を除去することを目的」としていること。

そして、ここが一番大切な部分だが、「半年後の住民投票に向けて公開討論会やワークショップを繰返」し、「行政や企業に情報を出させ、立場の異なる専門家を次々に呼んで住民が『本当の所どうなのか』を見極める」。その上で、原発に関する事柄を「(1)専門家に決めさせない、(2)議会での手打ちを許さない」。

ワークショップでは、「立場の異なる先鋭的な専門家を複数呼び、異なる立場の專門知を共有し、最後は専門家を徹底排除して合意形成を行なう」。こうした手続きの意味について、宮台さんは「医療におけるインフォームド・コンセント&セカンド・オピニオンの仕組に似る」と語る。「患者は複数の医者から互いに異なる治療方針の説明を受け、最後は患者が決める」という点を原発に適用した場合、「最後は患者が決める」という部分が住民投票ということになるわけだ。

宮台さんは、「住民投票の結果如何は最大目的でない」と言う。では、本当の目的は何なのか。それは、「『本当の所どうなのか』を見極めんとする営みがもたらす民度の上昇で、行政官僚と議会に緊張を持ち込むこと」である。

そうなれば「行政官僚と議員は嫌がる」のは言うまでもない。東京都の石原慎太郎知事は、2月10日の記者会見で「条例つくれるわけないし、つくるつもりもない」と言い放っている。また、「都議会自民党は議会軽視を理由に署名拒否を呼びかけた」というが、こうした政治家の行為に対する住民の対処について宮台さんは、「これを直ちに落選運動につなげればいいだけの話」とばっさり。

法で定められた数の署名は集まった。あとは都議会に条例の制定を直接請求し、条例が可決されればその半年後に住民投票が実現する。筆者は、こうした活動の積み重ねにより、脱原発にせよ親原発にせよ、その存在意義を自分の問題として考えることが、住民の民度を鍛えることにつながると考える。

原発都民投票条例が可決され、住民投票が実現することを強く望む。

(谷川 茂)