絵の教室と美少年と初恋 後編(犬山紙子のイラストエッセイ)

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美少年・H君から文通を申し込まれたOちゃん。
サブカル少女だったOちゃんは、“絵の教室で知り合った美少年と文通”というこの1文だけでおなかいっぱいである。

そしてその日から、“絵の教室の日に相手の筆箱に手紙を入れあう”という文通がスタート。手紙の内容は好きな音楽や本、漫画、そして自分の友達の話なんかを書いていたという。
お互い絵心があるので、イラストも添えての文通である。

「書きたいことがいっぱいありすぎて、手紙が2枚3枚になるんだよね。でもうざく思われたら嫌だから、それを1枚にがんばってまとめるの。手紙をもらった次の日にはもう返事を書いちゃってて、それを次の教室の日まで何度も何度も書き直すんだよ〜」
とOちゃんがもらす。

「あんたサブカル少女ってことは自意識過剰だったんだろうから、どうせ痛い手紙書いてたんでしょ〜」
と私がひがみつつ意地悪を言うと
「確かに、今思い出すと痛い手紙は何回か書いたな…………」
と言う。
「それが一番知りたい! どんな痛いの書いたんだ!」
としつこくせがんだところ、しぶしぶ教えてくれた。


<痛い手紙その1>
寺山修司の好きな詩から好きなフレーズのみを抜き出した手紙。


ゲハハハハハハ!!!!!!!


<痛い手紙その2>
中2病全開の、キリコとかダリとかを意識したシュールなイラストだけを描いた手紙

ウハハハハハハ!!

<痛い手紙その3>
Oちゃん、それまで男性と付き合ったことないくせに見栄をはって、「昔付き合った人がいて……」とうそを書いた手紙。

オヒョヒョヒョヒョ!

そんな痛いOちゃんに対し、美少年の手紙はたいして痛くない“友達のお見舞いに行った話”とか、“今読んでる本がこんな展開で楽しみです”とかそういった内容の、きれいな文字で書かれたまともな手紙だったそうな。
そして、教室では一切しゃべらず他人のような感じでいつつ、手紙のやり取りをすること1か月。
美少年からこんな手紙がきた。


「今度の日曜日、しし座流星群が見えるんだよね。良かったら電話をしながら一緒に見ませんか?」

パーーーーーーーーーフェクト!!!!!!!
パーフェクトですよ!!!
サブカル高校生が一番キュンとくるお誘いっ!!!!!!!!
絶対に電話しながらしし座流星群を一緒に見たいと思ったOちゃん。
とうとう親に頼みこんで、PHS(若い世代は知らないか?? 携帯とほぼ同じものです)を買ってもらったのだ!!!!!
そして、その電話番号を手紙に書いて知らせ、迎えたしし座流星群の当日。
超ドキドキしながら電話を待っていると、ちゃんと指定どおりの時間に美少年から電話が!!!!!!
「あ、あのHです。こんばんは」
と、あっちも女の子との電話に慣れてない感じで会話がスタート。
手紙のやりとりはいっぱいしているけど、まともな会話はこれが初めてである。

お互い話したいことがたくさんあったせいか、会話がまったく途切れなかったそうだ。
そして美少年がしし座流星群についていろいろOちゃんに教えて、電話しながらその瞬間を一緒に見たというわけである。

この状況と流星群の美しさに感極まったOちゃん、とうとう……


「ああーーーーっ! もう、私H君のこと好きです!」
と告白してしまったらしい。
するとH君、
「え……。その“好き”って、恋愛感情としての“好き”ってことでいいのかな?」
と確認。
「うん、うん、そうなの。大好きです!」
とOちゃん。


「ありがとう…………。俺も、君のこと好きになったようです。お付き合いしましょうか」
なんとまあ、OKをもらえたのであるっ!!!!!!!!
Oちゃんその日初めてうれし泣きをしちゃったらしい。

そこから、かわいい2人の初々しいお付き合いがスタート。
相変わらず教室内では他人のそぶりをしたけど、教室が終わったあとは必ず1時間くらいデートをしたという。手紙交換ももちろん続けながら。一緒に図書館で勉強したり、プラネタリウムに行ったり、公園を散歩したり。


それから1か月がたった頃。H君がチャリを片手で押しながら、初めて手をつないできたそうな。季節は冬だったからH君の手はひんやり冷たく、一生懸命あっためようとぎゅっと握り返したらしい。
そしてさらに1か月がたち、2人で高いビルの屋上に行き夜景を見て、

そして誰もいない階段でファーストキス。
Oちゃんは、彼氏が前にいた設定だったからあんまり動揺しないようにつとめたそうだけど、夢みたいなファーストキスで最高に幸せだったそうな…………

し・か・し…………
それから彼の受験が近づくにつれ、H君がそっけなくなってしまったというのだ。
Oちゃんはその空気を察し、手紙で「週2回のデートを週1回にしていいよ。勉強大変だもんね」と書いたそうな。
すると、H君からとんでもない手紙が返ってきたのだ。

「ごめんなさい。俺、受験と初めての恋愛でちょっとノイローゼ気味になってしまいました。秘密にしていたのだけど、君と付き合ってから、受験に影響が出たら困るので病院で抗うつ剤を処方してもらっています。でも最近それでも駄目なようです。外に出たり、“何かをやる”ということがすごくつらくなってきました。勝手で悪いのだけど、もう別れましょう。ごめんなさい」

H君、“美少年は繊細である”という型通りであった…………。
なんと彼、うつになってしまっていたのである。Oちゃんはまったく気づかなかったらしい。
でもこう言われてしまったら、Oちゃんも何も言えない。
PHSのメールで
「手紙の件わかりました。早く良くなるといいね。受験が終わったらきみは東京に行ってしまうから、どっちにしても別れたほうがいいんだよね。とってもつらいけど了解です」
と返事をし、それからOちゃんは毎日泣いたという。

そんな感じで2人の初恋は終了。
夢のような初恋は夢のようにあっという間にすぎてしまったようだ。
「そんな別れ方してたんだねえ……正直引きずらかなった?」
と聞いてみたら
「まあ、多少ね」
と、やはり少しひきずってしまったらしい。

そして、別れてからずっと連絡をとっていなかった2人だったが、1度だけ彼から贈り物が届いたそうだ。それがOちゃんの18歳の誕生日のときである。
なんとH君、Oちゃんの誕生日をちゃんと覚えていて、プレゼントを贈ってきたのだ。
「お元気ですか? 良い1年になるといいですね」
という手紙とともに…………

口に挟んで口を閉めようとすると、ビヨーーンと音の出るという変な楽器が入っていたようである………………。
“ビヨーンと音のなる変な楽器”としか言いようのない、間抜けな代物だったらしい。
東京で美少年にいったい何があったんだ…………。
東京こええ

「逆にこのプレゼントでふっきれたよね」
とOちゃん。
まあ、“美少年ときれいな恋をした”ということをひきずっていたわけだから、こうやって幻滅するようなものを送られると一気に冷めちゃうんだよな。これで完璧に2人の恋は終わったとさ。

これがOちゃん版『耳をすませば』である。
耳をすませば、聴こえてくる…………


ビヨヨヨヨーーーーーーーン