民主党の岡田克也副総理が自民党に「大連立構想」を呼びかけたと、波紋を呼んでいる。

 現在の民主党と自民党は、与党・野党として表面上は対立しながらも、肝心の“消費税増税”については、双方の主流派が「やりたい」という方向性で一致している。ただ、衆院解散前に連立した場合、自民党は結局、民主党政権の存続に力を貸しただけで終わってしまう危惧もあるため、消費税増税法案に協力する条件として衆議院解散を迫る「話し合い解散」の可能性も探っている。現在の世論ならば、政権を奪還することも可能だからだ。

 いずれにせよ、国民の声なき権力闘争。ジャーナリストの田中良紹氏はこう言ってあきれる。

「野田首相も谷垣総裁も話し合い解散をした後に、何を争点にして総選挙を戦うつもりでいたのか。それがさっぱり見えてこないということが疑問です」

 結局のところ、今、衆院選をしたとしても争点なんてない。もし、ドサクサで6月に野田首相が解散を打ち、総選挙になだれ込めば、民主が勝とうが自民が勝とうが、結局“増税大連立政権”が成立することは確実である。それは民主の増税派にとっても、自民の増税派にとっても望んでいることだからだ。

 もちろん、6月解散がなかったとしても、遅かれ早かれこの“増税連合”は固まってくる。しかし、総選挙が来年までズレ込めば、大阪維新の会やみんなの党といった第3勢力がきっちり候補者を立てる態勢を整えてくる。むしろ、このほうが有権者にとってわかりやすい構図になると、東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏はいう。

「民主党も自民党も、社会保障の財源のために消費税を上げると言っていますが、そもそもそこが根本的に間違っています。社会保障というのはセーフティネットですよね。これは所得の再分配に関わる政策ですから本来、財源は所得税や法人税から回すべきものなんです。官僚依存体質で、社会保障を消費税でやろうとする民主・自民の“増税連合”。霞が関改革を掲げ、消費税は地方の財源だと主張しているみんな・維新。この対立軸がはっきりすれば、国民にとっては今までよりずっとわかりやすい選挙になるでしょう」

 早期解散は、霞が関、民主党、自民党の“増税逃げ切りトライアングル”を利するだけ。今のように煮え切らない政局が続くと、つい「早く総選挙を!」と声を上げたくなるが、今回ばかりはグッとこらえて「話し合い解散、許すまじ」と声を上げるべきだ。

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