日本でもかなり報道されたが、フランスの白黒サイレント映画でありながら、昨年のカンヌ国際映画祭で突然注目され、なんと世界の映画賞で205部門ノミネートで105部門受賞。そして第84回アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞など最多5部門を受賞し、しかも出演した犬までもが賞を受賞するなど、世界中で大旋風を巻き起こした超話題作。既に今年一番の期待を胸に試写にお邪魔した。
1927年のハリウッド。サイレント映画界きっての大スター、ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、新作の舞台挨拶で新人女優のぺピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)と出会う。ジョージのファンであった彼女は、オーディションで彼の映画のエキストラ役を獲得。その後、台頭してきたセリフ入りのトーキー映画で大スターとなる。サイレント映画こそ芸術と主張するジョージは映画も大コケし、献身的な運転手クリフトン(ジェームズ・クロムウェル)に給料も払えず、時流に乗れずに落ちぶれていく。ぺピーは大スターとなった今でも、絶望の淵にいるジョージを陰から見守るが、時代は容赦なく2人を引き裂いていく...。

セリフは中間字幕。音楽はある。ストーリーはシンプルなメロドラマ。いわゆる普通の映画に慣れていると、サイレント映画で1時間40分、集中力を保つのはなかなか難しい。なので、観客を飽きさせない為には、音楽と演技、カメラワークが肝心なのだが、そこはさすがの受賞作。この3つの要素が非常によく練られていて、お陰できちんとストーリーを追うことができ、フランス映画の底力を見たという感じ。アザナヴィシウス監督は350本ぐらいのサイレント映画を観て研究したというが、彼が尊敬してやまない古き良き時代のハリウッドの監督達への愛情がそこかしこに見え、懐古的な"泣かせる場面"もあり、純粋に"ああ、映画って夢があっていいなあ"と再認識した。3Dなど、新技術満載の映画がもて囃される時代に、こんなに古くも新しい挑戦を試みた勇気は称賛されるべきだと思う。主演のジャン・デュジャルダンの大げさなジェスチャアもワザとらしくなく、あの時代に大活躍した銀幕のスターを思わせるオーラ。39歳とは思えない貫禄だ。

映画史的にはフランス映画のハリウッド映画崇拝は今に始まったことではないが、ハリウッドが最新技術に傾倒した商業主義映画ばかりを追求する一方で、「アーティスト」のようにフランスの映画人達が黎明期のハリウッド映画に敬意を表した質の高い映画を作り、アカデミー賞などを受賞しまくるのを見て、"オレ達だって作れたのに"と悔しく思うハリウッド映画人たちもいるのではないかと(むしろいて欲しいと)思う。異色作だが、こんな作品はそうそう出てこないので、ゼッタイに必見。 (★★★★☆)

−アメリカの著名な映画情報・批評まとめサイト「ロッテン・トマト」では:97点

4月7日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次公開