【寄稿連載】第十二話 ホームレス、都庁に突入!

写真拡大




今回は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。

■第十二話 ホームレス、都庁に突入!

デモは公園から繁華街を通って、約二時間の道のりだった。俺は適当にしゃべりながらついていった。黒さんはデモ隊の前のほうで、手作りののぼりを持ちながら歩いていく。俺はキョロキョロしながら、あとの二人・神さんと前さんを探した。しかし二人の姿は見つからなかった。やはり来ていなかったらしい。そうこうしているうちに都庁に着いた。

ここまでの道のりは、小競り合いはあったが大きな混乱はなく来ていた。都庁に着くと、役所の人が待ち受けている。デモ隊の代表が都に対しての声明文を読みあげて、それを役所の人に渡した。そして本当はそこで解散となるはずだった。

その時であった。興奮したメンバーの一人が、都知事に会わせろと騒ぎだした。代表が慌てて止めようとしたが、あっという間に周りに広がって、会わせろコールの大合唱となった。

すぐに警察が拡声器で落ち着くように言い、デモ隊の代表があいだに入って事なきを得た。もしこれが収まらなければ、暴動が起こってもおかしくなかった。俺は一人ただあ然として立っていた。その時ポンと肩をたたかれて、我に返った。俺が振り向くと、皆が帰っていくところだった。そしてそのあとについて俺も帰っていった。

デモ隊が機動隊や警察官とぶつかることは、海外ほどではないが日本でもまれにあることである。以前も、デモ前日に代表者が別件で逮捕され、デモ当日にデモ隊が警察署を取り囲んで機動隊ともめたりしたことがあった。海外みたいに警察が発砲したりすることはまずないが、小競り合いはそこそこあるのである。

俺は帰ってから興奮が収まらなかった。もしあのとき暴動が起こっていたら自分はどうしていただろうか。暴動に参加していたか、それとも何もできずにあ然としていたか。もしかしたら逃げだしていたかもしれない。

実際あのとき俺は一瞬頭が真っ白になり、ただぼう然と立っていた。多分怖かったのだろう。初めてだから仕方ないのかもしれない。しかしこれが何回もデモに参加し続けたら、慣れてくるのだろうか。それはそれで怖いかもしれない。俺はそんなことを考えながら眠りについた。しかしその夜はほとんど眠れなかった。

次の日俺はおっちゃんたちが住む公園に、自然と足が向いていた。その日はもう一つの慎重派の人たちのグループが、都庁に陳情書を持っていく日なのであった。

続く

執筆: この記事は松田良一さんのブログ『ホームレスのおっちゃんの溜め息』からご寄稿いただきました。