官公庁・企業に対する提言を通じ、日本の技術を海外に広げる

WOMAN’S CAREER Vol.81

株式会社三菱総合研究所 高島 由布子さん

【活躍する女性社員】公害対策、環境技術の事業化などに関する調査・提言を行う高島さん


■日本のGDP成長、幸福度向上に貢献する。そのための調査・提言を続けていきたい

官公庁に向けた調査・政策提言や、企業に向けた経営環境予測や経営計画策定、事業戦略構築などの支援を行うシンクタンク・三菱総合研究所。官公庁や企業から受託したテーマごとに調査・提言に必要な分野を専門とする研究員4〜5人が集まってプロジェクトチームが組まれ、そのうち2〜3人が中核となってプロジェクトを推進する。高島さんは入社以来、公害対策やその技術・ノウハウの国際展開など、環境分野での調査・提言を行ってきたが、入社後仕事の進め方を理解するのに1年かかったという。
「1年目のあるとき、民間のお客さまから『環境技術について知りたい』という漠然とした発注を受け、該当しそうな約20項目についての現状をそれぞれ100パーセントの力で調査し、提示しました。ところが、そのうち1項目にしか興味を示していただけなかったのです。本来ならば、お客さまが必要としている情報を詳細なヒアリングで2〜3項目に絞り、それぞれにかけるウエイトをすり合わせるプロセスが必要だったんですね。何度かそのような経験を繰り返し、お客さまのニーズを把握し、それに即応した情報を提供するのが当社のワークスタイルだと気づきました」

成長を感じたのは5年目ごろ。経済産業省から受託したプロジェクトに主担当として取り組んだときだった。有害物質による土壌汚染の増加に伴い、土壌汚染調査の実施などを定めた土壌汚染対策法が制定・施行されることになったことを受け、法規制の対象となるめっき業界に向けて法の意図や今後の対応策を広報するという案件。まずは約1年かけてさまざまなめっき工場に足を運び、経営者や現場の作業員へのヒアリングを重ねて業界について理解。さらに1年近くかけて法規制の内容にめっき業界はどのように関係するのかを整理したのち、法を解説するパンフレットを制作し、1年半近くかけて全国各地の業界団体などに対応策を講演して回った。
「これまで何ら規制がなかったところに新しくできた法律でしたので、めっき業界の皆さんは強い不安を抱いていらっしゃいました。一方、経産省としては円滑に法を執行したいという考えがあったため、互いの事情・背景を理解していただくのが私の役割でした。そのために、関係者の方々にめっき工場の現場まで足を運んでもらって互いの考えを理解する機会を作ったり、講演を通して業界の皆さんに『今すぐ土をひっくり返して調べろというものではない、必要な対応を取っていれば問題にはならない』と伝えるなどしました。その結果、業界の皆さんの不安を多少は解消することができ、それなりにお役に立てたのかな、と思います」

その後も主担当として環境技術の事業化や国際展開に関する調査・提言を行う経験を重ねたが、顧客が納得する提言をスムーズに出せるようになるまでには6〜7年かかったという。
「お客さまに『そうなんだよね!』と納得していただける提言ができるようになるためには、顧客はもちろん、テーマに関する専門家など、多くの関係者から話を聞くことが大事。それがWebや文献検索だけでは得られない情報を関係者へのヒアリングなどを通じて深く掘り下げて調査・提言する当社の強みです。提言に対して『何考えてんの』『全然違う』と否定されても、お客さまと話してどこが間違っているのか、否定される要因は何なのかを探り、何度も提案することをさまざまな分野でやり続けたことで、相手の業界や立場によってどのようにアプローチすれば納得していただけるか、ポイントがわかってきたように思います」

高島さんの提言からビジネスが動き出すこともあるが、顧客から直接感謝されることはあまりないという。そのような環境で高島さんを突き動かすのは、「日本のGDP成長、幸福度向上に貢献したい」という思いだ。
「就活時に環境技術を世の中に広げていく手伝いをしたいと考えていたところ、お客さまを通じてそれが実現できるシンクタンクの存在を知り、日本の技術でお金を生み出すことにかかわり、日本のGDP成長、幸福度向上に貢献することを自分のライフワークにしようと決意したのです。調査・提言に対して対価を払っているわけで、成果が出て当然という世界ですから、感謝の言葉をいただくようなことはありません。でも、ビジネスが動き出すことをお客さまから聞いたり、報道で見聞きしたりすると、目標に一歩でも近づいたように感じ、『よし!』と思いますね」

12年目には主任研究員となり、自ら仕事を創っていくことも積極的に行っている。官公庁から受託する調査・研究は公募によって決まるが、それ以前に、今取り組むべき課題を見つけ、調査・戦略立案の必要性を解く営業活動を官公庁にも民間企業にも行うのだ。1年目からプロジェクトリーダーに「君ならどんな仕事を創っていきたいと思う?」と問われ、鍛えられてきた高島さんは、自らの信念に基づいて日々課題を見つけ、各所に働きかけている。
「自分が目標とする世界を描き、それを実現しようとする意欲がないと、仕事は創り出せません。その点、当社の社員は皆、それぞれの分野で『日本をこうしたい』『世界をこうしたい』という目標を持ってその目標に向かってまい進していますし、私も『環境技術を海外に売ることで日本をより豊かにする』という目標に近づくために必要な仕事を日々考えています」

入社9年目に長女を出産し、産休・育休を経験したことも、高島さんの考えに大きな変化をもたらした。
「それまでは、必要であれば徹夜を厭わず、与えられた仕事に馬車馬のように取り組んでいましたが、会社の外から世の中や会社を見てみて、自分の仕事の効率の悪さに気づいたのです。より効率的にお客さまを経由して日本のGDP・幸福度を上げていくために、『自身の目標にどれだけ近づける仕事か』という基準で仕事を選び、創り出すことをより一層重視するようになりました。子育てとの両立は大変な部分もありますが、これからも、私が理想とする世界を実現するために突っ走っていきたいと思います。子育ても仕事も全部おいしいところを味わってやろうという気持ちで、貪欲に頑張りますよ」