その数200万人と、過去最多となった生活保護受給者。そんななか、生活保護率を下げ、「住みよいまち」として注目されつつある地域があります。富山市です。

 富山市長の森氏は、「住みよいまち」づくりに最も必要なことは「雇用」だと考えているそう。そのために必要となるのが「企業誘致」ですが、富山市ではこれまでのように「映画館やコンサートホールがあるから」といった高い文化水準での誘致ではなく、教育水準の高さや福祉の充実度など総合力のある地方都市を目指し、企業を迎えようとしています。それは、今の企業経営者の多くは、大切な社員が単身で行くような都市ではなく、家族と一緒に転勤できる都市に移転先を求めるといった流れを汲んでのこと。

 富山市に日本で初めて導入された本格的なLRT(次世代型路面電車)は、人と環境にやさしい公共交通として注目を集め、自転車の共同利用システム「アヴィレ」は、市内各所にあるステーションから自由に自転車が利用でき、任意のステーションに返却が可能。また、高齢者の3割が「おでかけ定期券」を持ち、往復200円で市内の隅々まで行けるので、高齢者の外出機会が増えています。

 公共交通を整備したことで、民間の再開発事業や設備投資が活性化。マンションは販売するとすぐに完売し、シネコンの建設も計画中だとか。2200席あるコンサートホールでは本格的なオペラが上演され、販売されているワインには行列も。これらの整備で、まちの中心部に自然発生的に人が集まるようになったのです。

 書籍『新しいローカリズム』の森氏との対談で、三菱総合研究所理事の小宮山氏は、人が動くことが重要だと指摘し、「カネ」は、「量」×「まわるスピード」だといいます。「たとえ人口が3分の2に減ったとしても、1人の人間が1.5倍外に出て動けば、経済(消費)は同じ計算になるはず。その結果、新たな産業や雇用が生まれ、よい環境がつくられるでしょう」(小宮山氏)

 「同じ150万円でも、生活保護でもらうのと、自分で稼ぐのとではまったく異なります。大切なのは、ある程度、規則的に社会参加ができて、身体を動かすこともでき、誇りをもって暮らしていくことです。それを一言でいうと、やはり"雇用"ということになるでしょう」とも小宮山氏はいいます。そういう意味では、富山市は、「交通整理→生活環境の向上→企業誘致→雇用→住みよいまち」というサイクルが構築されつつあるのではないでしょうか。

 小宮山氏の意見を受け、森氏は持論を展開。「今の時代、多くの人は"生活していくのにいくらかかるから、収入はこれくらいないとダメ"とか、"収入がないから結婚できない""もっと都会で暮らそう"などと言います。でも、地方ではそんなにお金がなくても十分に生活していくことができます。私は、人口減少社会をよりよく生きるヒントは"どうやって収入を得るか"と"どれくらいあれば幸せな暮らしができるか"ではないかと思っています。富山市の中山間地域に住んでいる人は、あまり収入がありませんが、幸せそうに暮らしている人がたくさんいます」(森氏)

 現在、交通の便利なエリアに住んでいる市民は全体の28%ですが、今後20年でそれを40%にまであげたいと目標を掲げる森氏。そして、郊外に住む市民には、最低でも1日2回は往復するデマンドバスを運行し、買い物や病院への通院など役立つ支援を行いたいといいます。

 インフラが整備されつくされ、人口が集中している大都市よりも、富山市のように自然や文化の残る地方のほうが未来への希望が大きいのかもしれません。視野を広げ、発想を広げることが、私たちに求められる生きる知恵なのではないでしょうか。



『「人口減少社会」をよりよく生きるヒントは富山市にあった?』
 著者:
 出版社:丸善プラネット
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