ニュースの教室:9限目「2013年の新卒採用計画」 ―求める人材像が変わってきた―

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日経新聞は3月18日、来春の採用計画調査を発表した。
大卒採用は12.1%増となったが、メーカーの伸びは鈍い。
また短大、高卒採用は昨年に続いて大幅減となった。
採用の増減の中に、企業の人材観の変化が読み取れるようだ。

2013年春の採用計画調査で目につくのは、つぎの5点だ。

1.大卒採用計画は12年春に13.7%増、13年春に12.1%増と、2年連続で2ケタの伸びを示した。これはリーマン・ショック前の採用計画を上回る回復ぶりを示している。

2.製造業は12年の採用計画では13.4%増と、非製造業の13.9%に肩を並べていたが、実際の採用では計画数を下回った。そして13年の計画では5.7%増:15.7%増と、非製造業に大きく水をあけられた。

3.鉄鋼(6.0%減)、造船(8.7%減)、繊維(5.2%減)など、製造業19業種のうち6業種で採用計画減となった。製造業では新卒採用と併行して合理化をするケースも見られ、社内の人材構成を研究開発にシフトする動きが顕著だ。

4.製造業では、工場の海外移転などで高卒採用の減少に歯止めがかからなかった(12年6.6%減、13年9.2%減)。採用増が続く非製造業でも、高卒採用の需要は上昇機運を見せていない。

5.不動産・住宅(33.1%増)、建設(16.6%増)などは復興需要による採用増が見られた。消費関連では内需の鈍化を事業計画に織り込み、海外展開をはかることで採用増に結びつけた企業が目立った。

円安と円高、東日本大震災、タイの洪水、欧州金融危機、
火力電力需要やイラン核開発制裁による原油の高騰、
アジア各地での軽・重工業やハイテク製品生産の拡大――。

近年の日本企業は、これらの連続的な揺さぶりに耐えながら、
「事業展開の方向」「求める人材」を改めて掴み取ったようだ。
事業展開の方向を表すキーワードを挙げれば次の3つだろう。
1.高技術、高技能
2.高ホスピタリティ
3.海外展開

ではこの方向が、採用計画にどう反映されただろうか。
・三菱電機はスマートグリッド(次世代送電網)や電力制御用半導体など成長事業の強化に備えて8%増の1410人の採用を計画。
・日本電産グループは新製品開発や新興国市場の開拓のために2.2倍の300人の採用を計画。
・トヨタ自動車は文科系を減らすものの開発部門を充実させるために4.9%増の580人の採用を計画。
・イオングループは日本、中国、マレーシアの3本社体制でアジア出店を加速させる。そのため海外店舗に勤務できるグローバル人材など、12年比3割強増の約2000人の採用を計画。
・ワタミグループは居酒屋や有料老人ホームの新規開設に向けて、3割増の345人を計画。
・「すき家」などのゼンショーグループは約100人増の450人の採用を計画。
・エイチ・アイ・エス(HIS)は海外拠点の拡充などのために過去最多となる大卒670人の採用を計画。

これらの動きを「求める人材像」に置きかえれば、つぎの3つだろう。
1.海外移転が極めて難しいハイテク・ハイスキル人材
2.もてなしや存在そのものが商品となるホスピタリティ人材
3.国内でも海外でも同じように働けるグローバル人材

既存社員もこの人材像を自らの方向に取り込む必要がありそうだ。

文●楢木望
ビジネスエッセイスト/ライフマネジメント研究所所長
『月刊就職ジャーナル』編集長、『月刊海外旅行情報』編集長を歴任。その後、ライフマネジメント研究所を設立、所長に就任。採用・教育コンサルタント、就職コンサルタント、経営コンサルタント。著書に『内定したら読む本』など。