野田、谷垣会談など与野党大連立がささやかれるなかで、ひとり「蚊帳の外」状態の小沢一郎。だが、最も強いカードを握っているという声もある

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 野田政権による消費税増税導入の動きが進むなか、反対派である小沢一郎氏の民主党内での影響力は、日に日に弱まっているかのように見える。だが、永田町界隈では、いまだに「小沢氏こそが政局のカードを握っている」と語る人は少なくない。

 ある全国紙政治部記者は、野田・谷垣による話し合い解散を回避するために、小沢氏(と小沢グループ)が取る行動を、こう予測する。

「あえて、小沢氏ひとりだけが消費税増税法案の採決を棄権する。その上で、グループに所属する100人以上の議員には粛々と賛成票を投じさせるんです。小沢さんはかねがね、『消費税増税法案の採択をすることになれば、議場から退出し、採決を棄権する』と表明してきた。でも、グループ議員の行動についてはひと言も言及していないんです。つまり、自分ひとりだけ消費税増税に反対すれば、政治家としての小沢さんのスジは表面上、通る格好になるわけです」

 衆院議員の定数は480で、そのうち民主党衆院の現有議席は291。小沢氏がひとりだけ採決を棄権しても、小沢グループのチルドレンが全員賛成に回れば、消費税増税法案はすんなり衆院を通過する。すると、どうなるのか? 東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏は、次のように解説する。

「そうなれば、野田政権はわざわざ自民党と手を握る必要がなくなる。逆に言えば、野党の自民党がわざわざ賛成に回る値打ちが薄れてしまう。その後は当然、与党が過半数を確保できていない参院で法案は否決され、再び衆院に差し戻される。ここで3分の2以上の賛成票がないと法案は成立しないので、数字上は自民党がキャスティングボートを握っているように見えますが、1度目の衆院、参院と2回の採決で反対票を投じた自民党からすれば、ここでいきなり賛成に回るなんてことはいくらなんでもできません。それをやれば、自民党はこんな重要問題で何を考えているんだという話になってしまう」

 つまり、あえてグループを挙げて消費税増税法案に反対しないことで、結果的に自民党の“存在価値”をなくし、法案成立も不可能になってしまうというわけだ。

 この展開に腹を立てた自民党が内閣不信任案を出し、「話し合い解散」に応じるように揺さぶりをかけてくる可能性はある。しかし、「小沢さんは内閣不信任案に乗ることはない。だって、消費税増税さえ潰すことができれば、政権に造反する理由なんてどこにもない」(前出・政治部記者)ため、成立する見通しは低い。

 野田・谷垣の「密談」ばかりが注目されているが、結局のところ、政局の行方は小沢氏の動向次第ということになる。

「そして、その小沢氏は絶対に解散だけはしたくない。つまり、この密談劇の結末は消費税増税もなし、話し合い解散もなしに落ち着く気配が濃厚ということです。総選挙? 来年夏の衆院の任期満了を待つ可能性が高いと思います」(前出・長谷川氏)

 国会にはさまざまな課題が山積しているというのに、権力者たちはあくまで“政局劇”にご執心のようだ。

(撮影/村上庄吾)

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