最近、ネットのトレンドワードとなっている「ビッグデータ」。何かと耳にする言葉だが、具体的にどういったものを指すのか。

 独立行政法人産業技術総合研究所・情報セキュリティセンター・ソフトウェアセキュリティ研究チームの主任研究員である高木浩光氏が語る。

「ビッグデータとは、本来は純粋に技術的なトレンドを指す言葉で、これまで処理しきれなかったような大量のデータが、ハード面の性能が上がったために利用可能な状態になってきたことをいいます」

 ビッグデータとは元々、クレジットカードや電話の利用記録など、量が膨大なデータの集積を指す言葉だった。これがIT技術の進歩により、さまざまなビジネスで利用されるようになった。

 最近のトレンドとしては、グーグルのように、ひとりの消費者に関する大量の情報(ビッグデータ)を新たなビジネスに活用するというものが代表的。都内で情報システムの開発に関わるシステムエンジニア(SE)が説明する。

「例えば、カジノについてよくグーグルで検索していた人がYouTubeを見たときに、ラスベガス行きの格安チケットの広告が表示される……といった具合。有効な広告を打つためにサービス間でユーザーの個人情報を活用できるようになったんです」

 こう聞くと便利なようだが、あくまで元になっているのは個人情報。ビッグデータという言葉が広まっていくのと比例して、軽々しく取り扱われるようになってしまっている。前出の高木氏が嘆く。

「今では本来の意義とは違う使われ方になりつつある。言うなれば“ビッグデータ=個人の情報”という感じで、それをなんでも収集して使うんだ、マーケティングに生かすんだという風潮があり、プライバシーに関わることなのに、その扱いに慎重さを欠いてしまっているほどです」

 3月1日にグーグルのプライバシーポリシー(個人情報保護方針)が改訂された際も、個人情報保護の観点から、その内容が危険視された。ビッグデータの活用には便利な面も多いが、個人の秘密が丸裸になる可能性も忘れてはいけない。

(取材/頓所直人、取材協力/田中宏)

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