昔はネットもパソコンもなかった

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今の若い人は本当に恵まれている――。

こう書くと絶対反発の声が挙がるだろうから先に言っておくと、今の若い人で恵まれていない人もかなりの数いることは重々承知している。しかし、平均的にみて、あるいは人口比で考えた場合、今の若い世代は中年以上に比べて圧倒的に有利な立場にあることは間違いないと思う。

昔を知らないから豊かさが分からない

今は何という豊かな時代だろう。当たり前と言われればそれまでだが、今の若い人は豊かなことが当然の世代に育った。企業に例えると、戦後の貧しい時代に初代が創業し、二代目が発展させた会社の三代目から四代目みたいなものだ。

徳川三代将軍家光は

「余は生まれながらの将軍」

と言ったそうだが、そういうのに近い。親あるいは祖父母の世代が豊かな場合も多く、「親の面倒をみる」というよりも「親に助けてもらう」という例の方が圧倒的に多いだろう。

現代の経済や科学技術の発達の恩恵は果てしない。衣食住のどれをとっても、今は安価で質が高い。スーパーやコンビニさらにネットのおかげで、買い物は非常に便利になった。

メールや携帯電話によって、コミュニケーションの能力は圧倒的に向上した。海外旅行が桁違いに安く行けるようになった。

ネットによって勉学の効率が劇的に高まった、特に本物の英語にいくらでも触れられるのは画期的…等々、こうやって書いていくのが空しいくらいだ。経済成長がゼロでも科学技術が発達しているので、その分、暮らしも豊かになっている。(「今が恵まれているなんてウソだ」という若い人、それは昔を知らないだけですよ!)

少子化だって悪いことばかりじゃない

日本の若者を豊かにしているもう一つの要因は、少子化である。家族内で子どもの数が減っているので、一人当たりに回せるカネや時間が必然的に増える。第二次大戦直後は夫婦1組に平均4人の子供がおり「貧乏人の子だくさん」と言われたものだが、今はその逆だ。

少子化は、就職にもプラスに働く。平成21年の人口統計によると、我が国の20才の人口は130万人。これは60歳の人口227万人と比べて4割も少ない。つまりリタイアする人数に比べて、若者の求職者はずっと少ないということだ。

若い人には、ITに強いことや年功序列が崩れてきていることもプラスに働く。今は合理化の進展や外国人の採用などもあるので新卒の採用は昔ほどの勢いはないが、それでも若者の就職事情は昔に比べれば格段に良いと言えよう。

「前向きだが貧しい」方がよかったのか

このように今の若い人の豊かさは、データが十分に示している。しかし、それでも「今の若い人は不幸だ」と考える人は多いようだ。それは貧しかった昔の方が「明日は今日より良くなる」と感じることができたためである。

確かに上昇気流に乗っていた時代は、今より貧しかったとしても、社会全体が前向きの気持ちで満ちていたと思う。それに比べて今は、高齢化、デフレ、中国の伸長など、気分を委縮させるニュースであふれており、気分的に前向きになりにくい。

結局は「気分は前向きだが貧しい」というのと「気分は後ろ向きだが豊か」という二つの選択肢のどちらが良いか、という話だと思う。私だったら躊躇なく後者を選ぶが、みなさんはどうであろうか?


小田切 尚登