三井物産株式会社

業界研究SPECIAL Vol.15

三井物産株式会社 人事総務部 人材開発室 チームリーダー 日山史巳さん

三井物産株式会社


■商社は危機に直面している

昔から総合商社を取り巻く事業環境は常に変化していますが、特にここ数年の変化はめまぐるしく、当社もまた厳しい競争にさらされています。グローバル化がこれほど深化する前の時代と比べれば、競合相手は様変わりし、世界的に見て非常に競争力の高い企業や個人と一緒に案件を創ったり、あるいはライバルとして争うことが常態化しています。例えば、旧来は世界的なメジャー企業ほか限られたプレーヤーとの協働や競争を想定していた資源・エネルギー分野やインフラ分野では、プライベート・エクイティ・ファンド(※1)や投資銀行、ソブリン・ウェルス・ファンド(※2)などが台頭してきています。各企業体や組織には強力な信用力があるだけでなく、そこで働く個々の人材も非常に高い能力を有しています。彼らは単に頭脳明晰なだけではなく、幼いころからその国最高峰のエリート教育を受け、国家を背負っているという使命感とタフな精神力、人をひきつけるリーダーとしての魅力などを併せ持った人材たちです。従来なら限られた企業しか投資していなかった資源・エネルギー分野やインフラ分野の資産には、今ではより多くのプレーヤーが参入するようになり、世界規模での競争が起こっている。商社の目から見れば、既存事業を進めていくにしても、あるいはまったく新しい事業を創っていくにしても、過去の成功パターンに基づいたやり方では事業を成功に導けない、大変厳しい状況に直面しています。

当社が今課題としていることの一つに、資源・エネルギー以外の分野で新しい事業を創出し、利益の源泉としていくことがあります。現在、当社の利益に占める資源・エネルギー分野の割合は約8割。投資家からしてみれば資源に投資する企業との違いがわからないほどの依存度ですし、これでは、商品価格の変動に収益が大きく左右されてしまいます。資源・エネルギー分野でもしっかりと収益を確保しながら、国際的な商品市場の浮き沈みと連動しにくい収益を生める分野において、新しい事業を創りだすことが求められているのです。例えば、将来に向けて布石を打とうとしているのが、医療機関の経営・運営支援やヘルスケア関連情報サービスへの出資などのヘルスケア分野です。2011年には、アジア各国で病院経営を行うマレーシア企業、インテグレイテッド・ヘルスケア・ホールディングス(IHHSB)に約924億円を出資しました。このような新しい事業をいかに継続的に創っていけるかが、今問われています。

※1 プライベート・エクイティ・ファンド…未公開株式または事業に対する投資を行い、その企業や事業の価値を高め、株式公開や第三者に売却することを目的としたファンド。

※2 ソブリン・ウェルス・ファンド…政府系ファンド、国家系ファンドとも呼ばれる、各国の政府が出資する政府系投資機関が運営するファンド。


■挑戦し続ける心と強さ、そして論理的に考え、問題を解決していく力は不可欠

世界中で新しい事業を創っていく上でこれから入社する人に求めたいこととして、まずは、絶え間なく自分を磨き、世界に飛び出す挑戦心があります。どんなに異なる文化・慣習の中でも裸になって相手の懐に入っていき、世界中のビジネスパートナーから「こいつと一緒に仕事をしたい」と思わせるような人間性や教養を備えていなければ、世界中の強者とビジネスを創っていくことはできません。これに加え、論理的思考力や問題解決力もやはり大切で、それらがないと、過去の経験則や前例にとらわれずに新しい事業のアイデアを考え出すことも、また世界各地でリーダーシップを発揮して人を巻き込んでいくこともできません。スイスやアフリカで世界中から集まった優秀な人材とともに学び、働き、彼らと切磋琢磨をしたことで、私自身身に染みてこのことを実感しました。

そして最後に、これら挑戦心や新しい事業を創造していくための素地を備えた人々が、目一杯実力を発揮して世界中で面白い仕事を創り出していくためには、常にアンテナを高くして自分や会社の置かれた状況を冷静に判断することのできる、謙虚さを持つことも大切だと考えます。恥ずかしい思いをしたこと、格好悪いと言われたこと、情けないと感じた経験、いわゆる「アイデンティティ・クライシス」と言えるような経験をたくさんして、自分のダメなところや弱いところをしっかりとわかっているからこそ、世界中の競争相手やビジネスパートナーの力をきちんと推し量り、また同時に彼らと信頼を築くことができると信じています。また将来、チームを率いる人材、あるいは経営を担う人材としてリーダーシップを発揮する上でも、自分のことをよくわかっていないと、メンバーの心の機微を推し量ることはかなわず、結果として彼らの信頼を勝ち取ることもできないと思います。数人のグループであっても、数十万人の企業であっても、その中にリーダーとして入った自分が周りからどう見られているのか、メンバー同士は互いにどのような感情を抱いているのかを想像して理解できるのは、少なくとも自分自身のことを誰よりもよくわかっている人なのです。謙虚な姿勢を持ち、過去の挫折や人生経験から紡ぎ出した人間力を備え、貪欲に挑戦する好奇心や情熱を持った人こそ、世界を舞台に活躍していけるのではないでしょうか。

当社の社員には、グローバルに「良い仕事」を創っていこうという心構えが浸透しています。自分の家族やパートナーに対して、三井物産と自分が社会の中でどういう仕事しているのか胸を張って伝えられるような素晴らしい仕事をやりたい、それを日々世界を相手に成し遂げていくんだという気概のある仲間であふれています。明治から続く歴史、ステークホルダーの皆さまからの信頼の強さやありがたみを実感しながら、グローバルな競争の中で現地の人々に愛される仕事を創っていく。社員一人ひとりが高い志を持ち、企業体として利益を出すその過程で胸を張って正々堂々と「良い仕事」を続けていく。それが当社ではたらく醍醐味であり、皆このような想いを持って三井物産で働いています。
異動からキャンペーンの再告知まで2カ月弱。目的を明確にし、やるべきことの優先順位をつけ、関係部署を巻き込んだ結果の成功だった。