東大の超人気ゼミだった「見田ゼミ」を通し、現在活躍中の思想家、社会学者たちに巨大な影響を与えてきた、見田宗介氏。

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「今」という時代は、いったいどんな時代なのか?そして「3・11後の世界」のカタチとは? 2008年にあった「人類史の大転換期を象徴する3つの事件」を切り口に大きな、大きなスケールで考えてみよう!

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――今日は見田宗介先生という、思想界の伝説的な方をお迎えしまして……。

【見田】昔の(笑)。

――いえいえ! 今の大御所から若手まで、世代を超えた思想家たちから何十年も尊敬され続けている存在ってほかにいませんから。

【見田】いや、そんな。

――そんな見田先生から、3・11から1年がたとうとしている今日、週プレの20代読者にとって「時代の見晴らし」がよくなるお話をいただけたらと思いまして。

【見田】孫ぐらいの(笑)。

――そこは実際そうです(笑)。

【見田】では「見晴らし」ということを念頭に、今日はお話ししましょうか。『プレイボーイ』の創刊は1966年ですよね。

――はい。

【見田】60年代はビートルズとかヒッピーとか出てきた時代で、70年代はレヴィ=ストロースの『野生の思考』が翻訳され、80年代はパルコ文化やバブルがあってと、60年代から80年代までは非常にくっきりした時代のイメージがあります。

 でも90年代と2000年代にはそれがないんですね。強いて言えば「混迷の時代」とか「見えない時代」とか表現される、「見晴らしのない時代」。2010年代は、そんな混迷から抜け出し、はっきりした見晴らしを獲得するのが課題なのですが。

――まだ見えないです……。

【見田】それで、遠回りのようですがここでいったん人間の歴史全体を大きくつかみ、現代がどういう時代なのか理解した上で大きな見晴らしをつかめたらと思います。

 生物学で「ロジスティック曲線」という有名な概念があります。

 どんな生物も、緩やかに数が増える時期の後に急激に増える時期を経て、再び安定する時期を迎える。しかし、大爆発期の勢いが強すぎると、安定平衡期になる前に滅んでしまう。

 例えばひとつの森があり、その環境に適した昆虫を何羽か放つとする。最初は少しずつ増えますが(ステージ1)、ある時期から爆発的な繁殖期を迎える(ステージ2)。しかし森の環境限界に近づくとまた繁殖が横ばいになり安定平衡期に入る(ステージ3)。

 これはあらゆる生物種がたどる助走期、大爆発期、安定平衡期の3段階です。でもこれはうまくいった生物の場合で、多くの生物は資源を食い潰し、ステージ2の大爆発期が終わった後、滅びに至る曲線を描いてしまう。

――森を食い潰しちゃうんですね。

【見田】人間にとっては地球が昆虫にとっての森にあたりますが、人間も生物学の法則から逃れることはできません。世界のエネルギー消費量の変化を見ると、産業革命以降増え続け、20世紀後半にはその曲線が垂直に近い勢いで急上昇し、エネルギーを食いつぶした。ロジスティック曲線でいうと、人類は今まさにステージ2(大爆発期)の最後のところからステージ3に至る曲がり角にいるんです。

 すると、90年代や2000年代がなぜ「混迷の時代」だったかも見えてくる。人類は今、ひとつの生物種が一度だけ体験する、この大きな曲がり角にいるんです。これまでのように資源を食いつぶす生き方ができないことは明らか。でも次のステージ3に対応する生き方や価値観はまだ見つかっていない。少なくとも皆が共有できるものはない。それでいろんな混迷があり、見晴らしのない状態が続いているんですね。

■大転換期を象徴した2008年3つの事件

――でも、そうした「成長の限界」は石油ショックもあった70年代には見えていた課題ですよね。なぜ今までずっと放置されてきたんでしょうか?