今、最も旬な俳優の一人、マイケル・ファスベンダーがセックス依存症の男を演じて昨年のヴェネチア映画祭主演男優賞を受賞して以来、ずっと注目していた映画だ。アメリカ公開の際は最も厳しい上映規制となり、日本でも映倫の判断によっては「R18+」規制でも上映許可が難しく、お蔵入りになると噂されていた。とはいえ、監督は新進気鋭のスティーヴ・マックイーンだし(あの超有名俳優と同名は驚き)、助演にはこれまた旬のキャリー・マリガンだし、そんな刺激的な話題だけではないメッセージがあると思い、試写にお邪魔した。

(C) 2011 New Amsterdam Film Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute

ブランドン(マイケル・ファスベンダー)はニューヨークで働くビジネスマン。洒落たマンションに一人で住む魅力的な外見の独身男性だが、人にはいえない秘密があった。仕事以外の時間全てをセックスに費やし、アダルトサイトを見たり、売春婦を呼んだり、とにかく黙々とセックスに没頭しているのだ。ある日、恋人に捨てられた妹のシシー(キャリー・マリガン)が突然彼を訪れ、しばらく泊めてほしいという。人との繋がりを一切持たず、喜怒哀楽の感情を排して生きてきたブランドンは、自分とは正反対のシシーを煩わしく思うが、渋々同居を黙認。その日から、彼の生活の均衡が崩れていく。

とにかく一言、哀れな男である。生身の人間(女性)とコミュニケーションができず、お金やインターネットなど、必ず媒介物がないと興奮できない。そして快楽の頂点を極めても、満足からは程遠く、ますます奈落の底に落ちていく。ほとんどゾンビのような表情で事に耽るブランドンは、刺激的な性描写云々を通り越して、気味が悪い。そういう特異なキャラクターを、マイケル・ファスベンダーは上手く演じている。ゴールデングローブ賞など多くの賞にノミネートされたものの、保守的なアカデミー賞ではノミネートを逃したが、メジャーな賞でもっと高く評価されてもいいはず。キャリー・マリガンも然り、だ。


(C) 2011 New Amsterdam Film Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute
そして予想通りの過激なシーン。劇場で上映可能なギリギリの線は保っている(?)が、観るのに覚悟がいる。誰といつ観るかも考えないと、観終わった後、気まずくなること必至。でも、挑発的な性描写だけで語られがちなこの映画に、マックイーン監督のスタイルがシリアスさを与えている。話の展開自体は若干ありきたりな感じだが、無駄を削ぎ落とした映像、他愛のない会話、意図的な長回しの多様が独特。ワンシーンがこんなに長いと"次に何かが起こるはず"と期待感を煽られる。終わり方も余韻を残していて心憎い。

よ〜く考えると怒りと可笑しさも込み上げる。普通に考えれば"変態男"の欲望と良心の呵責を、映画というアートにまで昇華しているのは、気取りすぎでは?と思ったり、なんで他人様のこんなことを真剣に鑑賞しているのか?と思ったり、中毒の恐ろしさを実感したり。様々な感情が刺激される映画だった。



(★★★☆☆)
−アメリカの著名な映画情報・批評まとめサイト「ロッテン・トマト」では:80点


3月10日(土)シネクイント、シネマスクエアとうきゅう他全国順次ロードショー