内閣府の調査によると、2011年9月時点の「雇用保蔵者数」(社内失業者数)は465万人、全雇用者の8.5%にものぼるという。平均で12人に1人、解雇しにくい大手企業であればさらに高い割合で余剰人員を抱え込んでいる可能性がある。

あるメーカーの経営者は、海外メーカーとの競争が激化し、事業の見通しは立たないが、かといってどのタイミングで「厳しいリストラ」を行うべきなのか判断できず、手をこまねいているという。

給与カット提案も「モチベーション下がる」

――中堅製造業の総務・人事担当役員です。不況と円高の影響により、当社は厳しい決算期を迎えています。来期も売り上げ回復の見込みが立たず、このままでは今期以上の赤字が予想されます。

各分野で大幅なコストダウンを進めていますが、正直「もう限界」という感じです。外注費や出張費の削減で、仕事に支障が出ているのです。若手や中堅の社員たちからは、

「社内失業者たちをどうにかしてほしい」

という声も聞かれます。

確かに40代から50代の社員の中には、給与に見合わない仕事をしているものも見られます。しかし彼らの仕事は全然ないわけではなく、それぞれ何らかの役割を担っているので、具体的に退職勧奨の候補がいるかというと難しいところです。

ただ、いわば給料の0.75倍の働きをする中高年が多く、「4人分の仕事を3人でこなし1人辞めさせる」ことができればいいのですが、そんな都合のいいことができるのかどうか。

現場マネジャーに「給料を一律25%カットするか」と相談すると、

「そんなことをしてモチベーションが下がったら、もっと働きが悪くなりますよ」
「ただでさえ給料の安い若手は辞めるでしょうね」
「組合が首を縦に振るとはとても思えません」

といった答えが返ってきました。

製品分野によっては、韓国や中国メーカーとの競争が激化しているものもあり、このままでは立ち行かなくなる部門も出てくる気がします。そうなれば有無をいわせず事業ごと撤退、人員整理ができるわけですが、そうなる前に手を打つことはできないものなのでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「給与カット」と「早期希望退職」を検討せざるをえない

同じような会社は、最近非常に多く見られます。背景には高止まりした40〜50代の給与が大きな負担になっていることと、法律や組合との関係で余剰人員が生じても解雇しにくいことがあげられます。高度成長期に効果をあげた「日本型経営」が足かせになっている状態です。

御社は「整理解雇」を視野に入れた手続きを開始すべきです。この状況を放置しておくことは、会社の存続を危うくするだけです。社内に「人員整理の必要性」を周知し、「解雇回避の努力」に移ります。役員報酬の削減や配置転換などを行った上で、40〜50代を対象とした給与カットの方針を労働組合に示し、あわせて退職金の上乗せなどとセットにした「早期希望退職」を募ることが考えられます。これらのステップには意外と時間がかかりますが、これを踏まずに整理解雇はできません。

注意したいのは、会社の将来を担う若い社員と、40〜50代が持つ必要な技術やスキルをつなぎ止めることです。スキル等を早期に引き継ぐのが理想ですが、もし間に合わなければ、いちど退職してもらったうえで新たな処遇で「嘱託」として働いてもらうことも考えられます。

臨床心理士・尾崎健一の視点
やむを得ぬリストラ「去る人」「残る人」両方のフォローを

会社が傾くギリギリまでリストラを避け、最終的に会社をつぶしてしまうのか。それとも早めのリストラで会社を生まれ変わらせ、将来の再雇用につなげるのか。いまの日本企業は、前者の道を選んでいるケースも多いようです。従業員に優しいといわれることもありますが、一方で間もなく限界を迎えそうな会社も見られ、それが本当に正しい道かを考える時期に来ました。

雇用調整をするならば、すべての社員のフォロー計画を作る必要があります。会社を去る人は確かに「働きが悪くなった」かもしれませんが、これまで会社に貢献してくれた人たちです。退職金の加算や再就職支援などに加え、カウンセリングを実施するなどメンタル面でのサポートも検討してみてはいかがでしょう。

また、忘れてはならないのが、残ることになった社員のフォローです。個人の仕事量が増えて長時間労働を余儀なくされたり、「次は自分ではないか」と不安や抑うつ的になる「サバイバー症候群」を発症したりする可能性があり、身体的・精神的なケアも必要になると思われます。



(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。