不況に光?LCCのビジネスモデル

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 2012年3月1日に日本初の格安航空会社PEACHが就航します。
 格安航空会社(以下LCC)が日本で話題になり始めたのはここ数年です。それもあって、日本でのLCCのイメージは、「薄利多売で、ただ航空券を安売りするだけの会社」「既存の航空会社よりワンランク下」といったものが多いように思います。
 しかし、海外に目を移すと、1971年に運航を開始したサウスウエスト航空を筆頭に、1998年に設立されたジェットブルー航空(どちらもアメリカ企業)など、LCCにはそれなりの歴史があり、単に安売りするだけでなく高い利益率を保ち、サービス面にも力を入れてきたことがわかります。
 これらの成功しているLCCが、サービス水準を維持したまま格安航空券を売ることができる秘密は何なのでしょうか。『「格安航空会社」の企業経営テクニック』(赤井奉久、田島由紀子/著、TAC出版/刊)からその一部を紹介します。

■「格安航空会社=薄利多売」は間違い
 営利企業である以上、LCCは価格を下げても利益を得なければなりません。その秘訣は、多い座席数と高い搭乗率にあります。
 LCCは機体のなかにできるだけ多くの座席を設置して、一度に輸送できる人数を増やしています。また、予約が少ないと予想される便は価格を安く、混雑が予想される便は比較的高めにするなど、安定して高い搭乗率をキープし、ひとつひとつの便の収入を最大化させるための工夫をしています。
 また、有料の機内サービスや、機内外の広告などの付帯収入はLCCにとって大きな収入源となっています。成功しているLCCはこれらの取り組みによって、低価格でも「薄利多売」にならずに運営されています。

■サービスを維持し価格を下げる方法
 サービス水準を下げずに低価格を実現するために、成功するLCCはさまざまな取り組みを行っています。その一つが短距離路線への事業特化で、LCCの多くは長距離路線マーケットを切り捨てて、新規参入の余地が大きい短距離路線のみで運航しています。これにより、これまで車や鉄道で移動していた旅客を獲得できることになります。
 また、コストカットも欠かせません。
 LCCは基本的に単一モデルの旅客機を揃えて、客室内の仕様も統一されています。そのため各業務が単純化され、コスト効率が高まります。
 それだけではありません。旅客機のパイロットライセンスは一機種ごとに異なるため、旅客機の機種を統一することで、LCCのパイロットは自社の全ての航空機を操縦することができ、整備士は作業が単純になり、ミスを減らすことができるのです。

■他業種への応用が可能なLCCのビジネス戦略
 LCCの事業戦略は、航空業界にとどまらず、他業種でも応用できるものが多く、実際にLCCと通ずる手法でビジネスを展開している企業もあります。
 最近よく見かけるようになった「全品290円均一」を掲げている居酒屋は、ビールなど原価が高く利益が出にくい商品と、枝豆など原価が低く利益が出やすい商品、また焼き鳥など回転率の高い商品や期間限定商品などを組み合わせることで、全体の売上個数を伸ばし、利益を上げるという戦略を取っています。
 利益を確保するために商品の平均価格をコントロールする手法はLCCにも通じています。
 また、エアアジア系列のチューンホテルは基本宿泊料を安く設定して、室内のエアコンやテレビなどの付加サービスに課金するというビジネスモデルを採用しています。これも、機内食や毛布などを有料化しているLCCのビジネスモデルとよく似た手法です。

 本書を読むと、LCCが「安かろう悪かろう」の二流航空会社ではなく、洗練されたビジネス戦略に基づいて事業を展開していることがわかります。多くの企業が不況下で新たなビジネスモデルを模索している今、LCCの戦略は航空業界に限らず様々な業界の人々にヒントを与えてくれるはずです。

※書籍ホームページはこちら(http://bookstore.tac-school.co.jp/pages/?add/lcc/index)
(新刊JP編集部)


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