[photo by Tony Gentile / Reuters]

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チェルシーのアンドレ・ヴィラス・ボアス監督(AVB)が、「解任の危機を感じている」と初めて公の場で認めた。ポルトガルのラジオ局TSFのインタビュー内で語ったものだ。オーナーのロマン・アブラモヴィッチから支持されている確信がもはや持てぬ状況で、自分も昨年5月に解任されたカルロ・アンチェロッティ前監督と同じ道を辿るのではないかと懸念しているという。

2003年にロシア人大富豪がクラブを買収して以来、最悪のシーズンを送っているチェルシー。最盛期だったジョゼ・モウリーニョ時代からチームを支えてきた選手たちが年齢を重ねチームが転換期を迎えているのは明らかなのだが、AVBに残された時間はあるのだろうか。

AVB解任の噂が出始めたのは、2月11日エヴァトンに2−0で黒星を喫してからだ。その直後、普段は姿を見せないロシア人オーナーが練習場に足を運ぶなど、いささか怪しい動きもあった。先週のCLでナポリに3−1で敗れたことでAVBの足元が大きくぐらついたことは想像に難くない。そのナポリ戦で先発から外されたフランク・ランパードやアシュリー・コールらとの信頼関係も崩れつつある。

AVBはチーム再生プロジェクトには3年を要すると主張し、【1】プレースタイルの変更、【2】持ち駒の徹底的見直し、【3】選手の意識改革を断行すると宣言してきた。とすれば、契約終了間近のサロモン・カルー、ディディエ・ドログバ、出場機会を求めて移籍志願するフロラン・マルダ、そして指揮官との確執が表面化しているランパードやコールがスタンフォード・ブリッジを去る可能性は高い。他方、チームの将来を担うフアン・マタやダニエル・スタリッジらを基軸に、古巣のポルトからブラジル人FWハルク(フッキ)やMFジョアン・モウティーニョ、DFアルバロ・ペレイラを引き抜いて補強を図ると見られている。しかし、AVBがこれらを実現するにはまず時間が必要だ。痺れを切らしたオーナーがたとえ誰を連れて来ようと、その指揮官に十分な時間を与えなければチェルシーの再建は厳しいだろう。

AVBの後任候補だったフース・ヒディンクは、ロシアのアンジと契約を結んだ。現在フリーで元リヴァプール監督のラファエル・ベニーテスならば、マージーサイドでタッグを組んだFWフェルナンド・トーレスを蘇らせるかもしれないが、如何せん彼はチェルシーファンから嫌われている。AVBを招聘するため1500万ユーロもの大金をポーンと支払っているアブラモヴィッチに“忍耐”の二文字が存在するのかは疑問だが、ここはひとつ過去の経験から学び、もうしばらく若くて優秀なAVBの手にチームを委ねてみるのが賢明ではないだろうか。

[photo by Tony Gentile / Reuters]