社長が衝撃を受けた“リスク”とは?

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 起業家支援の事業を展開し、『戦わない経営』『仕事は味方』をはじめ、様々な著作を執筆されてきた浜口隆則さんですが、新刊『社長の仕事』(かんき出版/刊)では社長とはどのような存在であるべきなのか、社長が存在する理由とは何かについて迫っています。起業されて以来、様々な苦難を乗り越えてきたからこそ至った浜口さんの境地は、経営者はもちろん多くの方も参考になることでしょう。
 今回は「社長同士での対談」と題し、株式会社オトバンク代表取締役社長の上田渉さんを招き、浜口さんとの対談形式でお話うかがってきました。3回に分けてお送りするインタビュー、今回は最終回の後編となります。

■後編:浜口さんが衝撃を受けた“リスク”とは?

上田「予期せぬリスクが現実化したとき、うまく対処するコツはありますか?」

浜口「予期していなかったときは、精神論になるかも知れませんが『ああ、きたか』と堂々と構えていますね(笑)。ネガティブになってしまうと、そのリスクから逃げてしまいがちになるので、『いよいよ自分にもそういう時期がやってきたな』くらいの感じで考えたほうがよいと思います。
よくない出来事が解決すると、後にプラスになることが多いんですよ。だから、多分これは何かを教えてくれるために起きたんだと考えて取り組むようにしています」

上田「なるほど。これまで浜口さんが経験した最も衝撃的なリスクはなんですか?」

浜口「やはり東日本大震災ですね。私の会社の事業も影響を受けましたし、もしあの規模の地震が関東で起きたらと考えると怖いな、と」

上田「では、ここから“理想的なチーム”についてのお話をうかがいたいのですが、ずばり、“理想的なチーム”とは何でしょうか」

浜口「その組織や社長に応じて理想的なチームがあると思いますが、私の中での理想は“自立型のチーム”です。一人ひとりが考えて、決断し、行動を起こす。そして失敗をしたらフィードバックをもらって改善し、また実行して、成功したらそれを伸ばしていく。これが社員一人ひとりできている組織が理想ですね」

上田「浜口さんの会社では、自立型のチームに近づいてきている実感はありますか?」

浜口「ありますね。例えば昨年4月に入社した新入社員なのですが、学生の頃から半年間弊社、ビジネスバンクでインターンをしていたんですね。ビジネスバンクではインターンを終える際に新事業を立案してプレゼンテーションを行うのですが、彼は弊社に入社して、自分で立案した事業を4月に立ち上げたんですよ。私もアドバイスをしたり、相談に乗ったりしましたが、半年ほどで収益が出るようになりました。今の彼のあだ名は新人なのに“部長”です(笑)」

上田「それは素晴らしい社員ですね。では、そうした自立型社員を育成するポイントはなんですか?」

浜口「私自身、そうした社員が育つ組織を作るために試行錯誤してきました。痛い目も見ているのですが、1つ言えることは、思いきって任せてしまうことが大事ですね。
ただ、これはすごく難しい部分でもあって、任せたことで何か起きても大丈夫だと思えるくらいに経営を伸ばしていないと安心してできません。だから、任せる環境をつくるには、経営が心理的な側面と物理的な側面双方で満たされている状態を作り出すことが大事です。
また、採用も重要です。任されるとモチベーションがあがる人もいれば、任されると頑張れなくなってしまう人もいます。それは良い悪いではなく人間のタイプですから、任されると頑張れる人を選ぶということが大事になりますね」

上田「私が昔、読んだ本の中に大企業と中小企業は、採用に応募してくる人の姿勢に違いがあるというように書かれていたのですが、そうした中で自分の会社に最適な人材を選ぶことはすごく難しいんですよね」

浜口「昔はそうだったと思いますが、今はそうとも言えなくなってきているのではないでしょうか。昔からチャレンジャーというか、ベンチャーや小さな会社で働きたいという人たちが必ずいたはずなのですが、逆に中小企業が彼らにアプローチできていなかった。ただ、インターネットが発展して、工夫すればうまく露出することもできますし、学生側もアクセスしやすくなっていると思います。これからさらに優秀な人材、自発的に動ける学生たちが中小企業に入っていくようになるのではないでしょうか」

上田「本書の中に『社長不在の日』という項目があったのですが、浜口さんご自身は社長不在の日を作られているのですか?」

浜口「私がいないときのほうが多いですよ(笑)創業時は朝から晩まで会社内にいましたが、途中で私が社内にいてしまうと最終的に私のところに相談に来てしまうんですよ。それでは自立型の組織を作る上で足かせになってしまうので、物理的に会社からいなくなろうと思ったんです。最初は水曜日の午後を不在の時間にしまして、別のところで仕事をしていました。
それから不在の日を増やしていって、現在は火曜日と木曜日はまるまる会社にいないし、水曜日と金曜日の午後はいません。1日中会社にいるのは月曜日だけですね。その間は自分たちで判断して、困ったときはメール、緊急を要するときだけ電話をかけてきなさい、ということにしています。普段の社員の動きは日報を通して把握していますね」

上田「では、最後に社長とはどのような存在だと思いますか?」

浜口「(笑)難しいですね。社会の困りごとを発見し、その困りごとを解消する方法を見つけ、その方法を形にして社会に提供する“会社”という仕組みを管理・運営する人のことですね」

上田「それは非常に深い定義だと思います」

浜口「もっと身近な言葉で定義することもできるのかも知れませんが、やはり社会の困りごとを発見するというのが最初ですね。そしてそれを発見し続けることも大事です」

上田「困りごとを発見していくことは、それだけより良い社会に近づいていくということですからね。社会を良くするために、誇りをもって仕事をするということが大事なんですよね」

浜口「そうですね。どんなに便利になって、どんなに職業が細分化されて困りごとが解決されてきても、まだ困っている人はたくさんいますし、困りごとは生まれていくものですから、それを発見し、解消する方法を見つけて、ビジネスを通して困っている人たちにサービスを提供していくことが、経営者の使命だと思います」

上田「そうですね。今日は充実した時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました」

浜口「ありがとうございました」

(了)



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