ネットサービス「カヤック」は今年、『節就宣言』を行なった。学生を採用するに当たり無駄なプロセスを省く企業が増えている

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 現在の就活システムでは、企業は学生をひとり採用するのに何百万円というコストがかかると言われている。だが、それだけの費用をかけても欲しい人材が採用できるとは限らない。こうしたなか、より効率的な独自の採用方式で学生を選考しようとする企業が現れ始めている。

 話題になったところでは、ユニクロを展開するファーストリテイリングや食品大手・ネスレ日本は、選考の時期を区切らない通年採用を実施。就活の「ルールを変えよう」とうたうソニーは自由な服装を呼びかけ、選考方法が複数あるなかから応募者自身が選べるようにした。住友商事はエントリーシート廃止を打ち出している。議論を呼んだ岩波書店の“コネ”採用も、従来の就活に反旗を翻(ひるがえ)すやり方といえる。

 こうした取り組みに対し、「学生から人気の高い大企業、有名企業だからできる試み」という声もある。しかし、必ずしも有名企業でなくとも、独自の採用方式で成果を挙げている企業はある。

 都内に3店舗、中国に2店舗のちゃんこ料理店を経営する「玉海力」では去年の9月、大学4年生向けに2日間のインターンシップを行なった。内容は本部での雑用だが、何より学生に会社を見てもらうことが大事なのだという。

「もともと採用では4次、5次まで丁寧に面接を行ない、社員と一緒にご飯を食べるなど、いろいろなことをしていました。その延長線上で、一緒に働いてみればもっとお互いにわかるだろうということでインターンシップになったんです。求めていない人材に入社していただくのも、入社してからすぐ辞めるのも、お互いに不幸です。学生には『仕事は厳しいし、たくさん泣くよ』という話をさんざんして入ってもらうので、新卒で入社して辞めた子はひとりもいません」(代表取締役・河邉幸夫氏)

 しかも、同社は就活サイトに登録していない。「そんなにたくさん応募されても困るし、お金もけっこうかかる。そのお金で社員に還元したほうがいいと思います」と河邉氏。

『こえ部』『ART−Meter』などのユニークなネットサービスを展開している「カヤック」も、就活サイトからエントリーシートを送るという従来の採用方式とは異なる「節就宣言」で注目を集めた。

 そもそも同社では、去年から2年連続で、エントリーシートの代わりに卒業論文や卒業制作の作品で1次選考を行なう「卒制採用」などを行なっていた。さらに今年は「節就宣言」として、Facebook、GitHub、Flickrのいずれかの情報で選考する“ワンクリック採用”に乗り出した。

「弊社は、『つくる人を増やす』ことを経営理念に掲げており、採用活動においてもそれを実現していきたいと考えております。学生が就職活動に時間を費やすより、モノを作る時間をもっと増やせないだろうか。そのアプローチのひとつとして、“卒制採用”や“節就宣言“を提案したのです。エントリーシートやその後の面接では、結局、『学生時代にどのような活動をしてきましたか』ということを伺います。例えば卒業制作などはそれが一番よく見えるものなので、あえてエントリーシートであらためて主張していただかなくても代替できるという意味です。もちろん卒業制作やFacebookではわかりにくい活動を行なっている方もいるので、そこは通常のエントリーでも受け付けています。あくまで代替可能な方は節約してもらおうという形です」(人事担当者)

 新しい採用方法を模索している企業は、効率だけを考えて行なっているわけではない。むしろ採用に力を入れているからこそ、「就活サイトからエントリー」という現在の就活スタイルに満足できなくなっていると言えるだろう。

(取材/梶野佐智子)

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