新たな噴火口と予想される富士山東側斜面。先月末には写真のやや左寄り、そして2月上旬にはやや右寄りの位置で「噴気」現象らしきものが確認されている

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 山中湖畔から映した富士山の姿を24時間ライブ配信している「絶景くん」。富士火山活動の取材を続けているジャーナリストの有賀訓氏が、その映像で異常現象らしきものを発見していた。

 日時は2月9日の午前3時30分頃。富士山東側斜面、標高約2700m地点で「噴気」らしきものが立ち上がったという。

「この2月9日は満月の翌日で、午前1時頃から快晴の夜空に月光を浴びて薄ぼんやりと浮かぶ富士山東麓の高感度画像を眺めていたんです。すると、月明かりに照らされて、2時過ぎから山腹中央の冠雪部分だけが昼間のように明るくなってきたので、変化を見届けるために、ほぼ1分間隔で配信画像をPCに保存し続けました」(有賀氏)

 その輝きは予想以上に強まり、3時過ぎには雲ひとつない富士山東側の全体地形が見渡せるまでになった。そして3時27分06秒、画面に突如として奇妙な光景が現れた。

「明るい斜面から、急に柱状の雲のようなものがのび出たんです。前の画像(3時26分17秒)と後の画像(3時28分17秒)、さらに5時近くまで保存し続けたほかの画像についても似た形状のものは見当たりませんでした。これは普通の雲や霧などではなく、富士山の内部から発生した噴気と考えられます」(有賀氏)

 有賀氏が富士山東側斜面に注目するのには理由がある。今年1月25日にも同様の噴気現象らしきものが確認されているため、富士山が活動期に入ったのではないかと観察を続けていたところなのだ。

 このとき斜面から出ていた柱状の雲のようなものは、推定高さ200m。むろん、雲や舞い上がった雪の見間違いではないかという声もある。だが、有賀氏は言う。

「富士山噴火に懐疑的な人は、この写真を雪を巻き込んだ“旋風”だと思うかもしれません。しかし旋風と噴気はまったく違う。旋風の特徴は激しく移動することで、回転運動が衰えて形が崩れた後も、巻き込んだ細かい土砂や粉雪が10分以上も空中高く舞い続けているもの。ましてや富士山7合目に積もった大量の粉雪が旋風で200mも吹き上がったのなら、再び山腹に落ちるまでには相当な時間が必要です。しかし今回は、2分もたたないうちに消えてしまった……」

 しばらくは注意が必要だ。

(撮影/五十嵐和博)

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