あれから1年が経った。3.11、あの日あなたはどこにいましたか? 多分、この問いは何度も聞かれただろうし、聞きもした。私は確定申告の帰り道、道路を歩いているときだった。

彩瀬まる『暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出』は、25歳の新人女性作家が一人旅の途中であの震災に遭遇してしまった体験記である。福島のJR常磐線新地駅で停車中、地震は来た。動かない電車に見切りをつけ、二駅ほど先に住んでいるという偶然となりに座った女性と歩き出す。

新地駅は海から500メートルほど。コンビニで買い物をしたのち、津波警報の放送が流れた。後ろを振り向くと地面がうごめいている。

彼女たちは高台へ必死に駆け上る。町が、走ってきた道が水に呑まれる。

命からがら逃げた先で原発事故を知る。見も知らぬ家族に助けられ、とにかく逃げ延びることだけを考えた4日間を書いた第1章は、小説新潮5月号に掲載され、大きな反響を読んだ。

その後の2回の福島訪問記を加えて今回一冊にまとまった。2010年に「女による女のためのR−18文学賞」を受賞したとはいえ、まだ個人の本が一冊もない新人作家のノンフィクションである。しかし彼女の視線は小説家のものだ。「淡々と」ではなく、間逆の形容詞をつけたいけど言葉が見つからない。彩瀬まるは体中から「読んでほしい」という気を発して、本書を書き上げたと思う。

この本が代表作と言われないように頑張ってね、と最後にエールを送る。

(東えりか)







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