真島ヒロが『週刊少年マガジン』(講談社)で連載中の魔法ファンタジー漫画『FAIRY TAIL』第31巻が2月17日に発売された。主人公ナツ・ドラグニルら魔導士ギルド「妖精の尻尾(フェアリーテイル)」の主要メンバーが7年間の空白を埋めるためにパワーアップするが、修業よりも仲間との絆という格差社会の世相を反映した展開となった。

 『FAIRY TAIL』はナツ達が消えてから7年が経過するという超展開となった。7年ぶりに奇跡の生還を果たすものの、その間に周囲のキャラクターは成長し、ナツ達は相対的に弱くなった。そのためにナツ達は修業を始める。しかし、結局、修業らしい修業は行われずに特別な魔法の力でパワーアップする。かつて修業はバトル漫画の重要な要素であったが、近時は描かれることが少なくなった。
 貧困が固定化する格差社会は努力が報われない社会であり、修業して強くなるという展開には希望もリアリティも見出せない。修業をしなくても強いキャラクターは強い。バトル漫画の主人公の多くが親も名のある猛者である点も、親の経済力で子の人生が左右される格差社会の現実を反映している。修業の代わりに重視されるものが仲間との絆である。これも反格差の運動が「We are the 99%」など連帯を重視する傾向と重なる。

 『FAIRY TAIL』と比較されることの多い尾田栄一郎『ONE PIECE』も修業シーンが乏しいことが特徴である。主人公モンキー・D・ルフィはガープ海軍中将の孫であり、革命家ドラゴンの息子という血統である。それでも『ONE PIECE』は海軍大将との実力差を痛感したルフィ達が2年間を修業に充てるという過去の王道的な修行路線を踏襲した。努力よりも仲間との絆を重視するという現代的価値観を描く作品として注目を集めた『ONE PIECE』であったが、国民的な注目を集めるにつれて往年の王道漫画の価値観が入ってきている。
 対する『FAIRY TAIL』が7年間の空白で生じた力の差をどのように埋めるのか注目されたが、努力よりも仲間との絆という現代的価値観を前面に出した。ナツ達は修業初日をバカンスで楽しむ。残りの修業期間の大半も遊んで過ごすことになる。これはナツ達が意図したものではないが、修業よりも絆を深めることに価値を見出す思想が現れている。

 結局、修業にならなかったナツ達であるが、意外な人物達に助けられる。修業ではなく、絆によって助けられた形である。主人公達を都合よくパワーアップしてくれる御都合主義的な展開に見えるが、歪な感情を有していたキャラが明るくなったことを過去に戦ったキャラクターが素直に喜ぶなど描写が細かい。
 著者は巻末の「あとがき」で「バトル漫画でありつつもギルドの絆みたいなテーマを大切にしている」と述べる。その言葉通りに絆を重視する内容となった。

(林田力)