自転車で世界一周している日本人の河源啓一郎さんは3週間前に湖北省武漢市に到着、17日夕方に自転車を盗まれた。彼の友人が19日にこの件をミニブログに掲載すると、すぐに5万人のユーザーからコメントがあり、都市の尊厳を守ろうと主張する人まで出てきた。河原さんは都市全体が彼のために自転車探しをしてくれたことに感動したと述べている。結果、自転車は無事戻ってきた。中国網日本語版(チャイナネット)は22日、「日本人旅行者の自転車紛失にVIP待遇が議論を呼んでいる」と報じた。以下は同記事より。

 武漢だけでなく、中国の多くの都市で自転車の窃盗事件は珍しいことではない。自転車の頻繁(ひんぱん)な紛失はその都市の道徳喪失や治安の悪さではなく、都市の治安管理の手落ちを反映している。根本的にみると、この難題がなかなか解決されないのは、一部の行政権力が一般人の権益をまったく気にかけていないことと関係している恐れがある。

 中国の都市で自転車に乗るのは誰か?それは往々にしてその都市に住む収入の低い労働者で、発言権も権利を守る力も弱い。一方、窃盗するほうにしてみれば、簡単でリスクも低い。捕まったとしても重い罪にはならない。そのため警察、自転車メーカー、交通管理部門は自転車の防犯装置や防犯対策をさほど重視していない。自転車の持ち主までが窃盗に慣れてしまっている。結局は誰もが「警察側の迅速な対応」を受けられるわけではない。

 実際、その都市と国のイメージは、高層ビルや経済的な奇跡、エリートの生活スタイルなどではなく、もっとも弱くもっとも助けが必要な一般の労働者をいかに待遇しているかによって決まる。中央の指導者は繰り返し、「体面のある労働実現」「より尊厳のある生き方」と強調している。小さな自転車の運命は労働者の体面、安全性をあらわしているといえる。

 その意味では、中国の自転車を持つ一人一人のストーリーは、社会のマナー水準をはかるひとつの尺度となるだろう。(おわり 編集担当:米原裕子)