社員には理解されない“社長の役割”とは?

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 起業家支援の事業を展開し、『戦わない経営』『仕事は味方』をはじめ、様々な著作を執筆されてきた浜口隆則さんですが、新刊『社長の仕事』(かんき出版/刊)では社長とはどのような存在であるべきなのか、社長が存在する理由とは何かについて迫っています。起業されて以来、様々な苦難を乗り越えてきたからこそ至った浜口さんの境地は、経営者はもちろん多くの方も参考になることでしょう。
 今回は「社長同士での対談」と題し、株式会社オトバンク代表取締役社長の上田渉さんを招き、浜口さんとの対談形式でお話うかがってきました。3回に分けてお送りするインタビュー、今回は中編となります。

―中編:社員には理解されない“社長の役割”とは?―

浜口隆則さん(以下、浜口)「社長の仕事は社員から見ると分かりにくいにくいですが、組織の中ではそれぞれに必ず役割があるように社長にも仕事があります。そういったことを組織で共有できてくると、社長の仕事を遠慮なく全うしやすくなりますね。
私はよくタイタニック号の例をあげて話をするのですが、大きな船を一つの会社としたとき、ある人は甲板を掃除したり、ある人はコックだったりと、みんなそれぞれ持ち場で一生懸命働いているわけじゃないですか。でも、みんな頑張っていても、進路のずっと先に氷山があることを発見できなければ、全部無駄に終わってしまうんですよ。ただ、先をずっと見つめている人は、忙しく見えないんですよね。甲板を掃除している人からすると、ただボーっと海の先を見つめているだけじゃない?と思うかも知れません。社長というのはおそらくそういう役回りで、みんなが必要な役割を果たしているんだと考えることが大切だと思いますね」

上田渉さん(以下、上田)「なるほど。それはまさに本書の中の「社長に残される、大切な仕事」の中の、「未来を見つめ、舵を切る」ということなんですね

浜口「それが社長にとっての最終的な仕事だと思いますね。そして、最も重要であり、他の人には任せることができない仕事です。もちろん、会社が永続するために全責任を負ってできることをすべてやるということからスタートしますが、営業の部分はA君ができるからA君に任せる、といった具合に自分以外に出来る人がいる仕事はどんどん任せていくべきだと思います。しかし最後に会社の方向性を決めるのは経営者であり社長です。社長の舵取りが失敗したら社員もえらい目に合いますからね。大切な仕事をしているんです」

上田「責任をすべて背負っているわけですからね」

浜口「だから簡単なように見えて全く簡単ではない仕事ですね」

上田「でも、タイタニック号の例でもそうですけど、社員からはなかなか理解されにくい仕事ではありますよね。では、社長にとって最後の仕事がなくなる、つまり引退するときとはどのようなときなのでしょうか」

浜口「それは意思決定やビジョンを生み出すことが自分よりも出来る人間が育てられたときですね。おそらく年齢的な部分でも経営者としての旬みたいなものがあって、私もまだ経験したことがないから分からないのですが、おそらく50歳半ばが経営者としてのピークなのではないかと思います。それまでに自分以上に未来をみつめ、舵を切れる人が出てきたら交代すべきですよね。私もそういう人間が出てきたらすぐに交代したいですね(笑)」

上田「(笑)もし交代できたら、次は何をしますか?」

浜口「今引退したら、別の仕事をしますね。今の会社の一部門だけをもらってやるとか」

上田「では話を変えて、商品力についてお話を聞きたいのですが、企業にとっての理想の商品とはなんでしょうか」

浜口「これはいろいろあると思いますが、まずは営業をしなくて売れる商品が理想的ですね」

上田「それは圧倒的に商品力が優れているということですね」

浜口「そうですね。また、自分の会社が目指していること、ミッションに反するような商品は理想的ではありませんね。自分たちの掲げたミッションや社会課題の解決という何かしらのテーマが入っていて、営業力が0でも売れるというのが理想的な商品といえます。でも、実際はなかなかそんな商品はありませんけどね」

上田「浜口さんご自身の会社で、そういった商品はありますか?」

浜口「レンタルオフィスの事業はもちろん100点満点ではないですけど、0からはじめて、さらに競合企業も出てきて一つの業界に成長してきたので、小規模ですが産業の一領域を創出できたという点ではある意味で理想的な商品だったと思いますね。それだけ社会の中にニーズがあったということですから」

上田「それだけ起業家からのニーズがあったということですか?」

浜口「起業家からのニーズというよりは、以前と比較して会社の単位が小さくなったことが要因ですね。昔は100人、200人規模でも小さい会社といわれてきましたが、今は一人、二人で経営している会社もたくさんあります。そういった小さなオフィスが社会に必要だったということですね」

上田「浜口さんは自身の会社のミッションと合い、そして社会のニーズを満たす商品を生み出せたと思うのですが、社長なり会社のミッションに合った商品を生み出すコツってあるのでしょうか」

浜口「いろいろな企業の経営者と話して感じたことは、意外とミッションを持っていない会社が多いんですよ。もしくは、ぼんやりしている。そういう場合は、まずはミッションを明確に持ちましょうということですね。そして、会社を経営する意味や目的はそのミッションを達成することだという最終的なゴールを決め、逆算して何をすべきか考えることがコツだと思います。ただ、ビジネスは一筋縄ではいかないものですから、私たちのようなパターンもあれば、商品を先行して思いつく人もいらっしゃると思います。そういった商品が先行して、その後にミッションを創っていくということもあります」

上田「確かにスリーエムさんは「ポストイット」という商品が偶然できて、その商品がミッションを体言できるか分からないけれども確信だけで商売をして、世界的に普及したというケースもありますね」

浜口「そうですよね。だからああいうやり方も否定はしません。それで社会の役に立っていればいいと思います」

上田「浜口さんはご自身のミッションとどのようにして出会ったのですか?

浜口「私はもともと会計事務所で勤務をしていたので、たくさんの経営者に会う機会がありました。その中で、実は社長が社会に大きな影響力を与えていることに気づいたんです。私の実家が会社を経営していたこともあって、社長が身近にいたりして(笑)、社長って社会性があまりなくて自分勝手な人が多いのかなと思っていたのですが、実際にお会いした社長の方々はすごく社会のことを考えていたんです。そういったところから、こういう人たちが世の中に増えなければ、良い社会にはならないという想いを持ち、ミッションにつながっていったんです」

上田「なるほど。では、また視点を変えてお話をお聞きしたいのですが、今度は社長のリスクについてです。本書ではリスクマネジメントについても言及されていますが、理想的なリスクとの付き合い方を教えていただけますか?」

浜口「まず、そもそも会社はリスクだらけということを自覚するのが最初ですね。起業して3年から5年ほどの範囲で事業が上手くいってしまう会社が50%くらいあるんです。ところが、10年経つとそのうちの8割くらいが潰れてしまい、2割しか残らない。つまり、もともとの10%ですね。
どうしてそうなってしまうのかというと、自分を過信してしまうんです。「自分って経営者としてイケてるんじゃないか」と。ところが、3年や5年の間で成功した事業は、経営に成功するために必要な要素が偶然揃っていることが多いんです。例えばAさんがいたからその事業が成立していた。ところが、Aさんがいなくなってしまうというリスクは普通にあるわけですよね。経営者はここでAさんの存在の重要性に気づけなければ、事業は失敗に終わってしまうということです。会社は常にリスクにさらされているということを考えることが、リスクと付き合っていくなかで大事なことだと思いますね」

上田「確かにそうですよね」

浜口「また、リスクの中には、コントロールやアプローチできるものとできないものがあります。例えば私たちのレンタルオフィス事業でいえば、大地震はコントロールできないリスクです。だからコントロールできるものをあげて優先順位を立てて、その順位の高いものからミニマイズするべきだと思いますね。これは付き合い方というより、対処の仕方ですが」

上田「つまり、リスクをどれだけ事前に認識できるかですね」

浜口「そうですね。それがリスクと付き合う上での基本です」

<後編:浜口さんが衝撃を受けた“リスク”とは?>



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