ニュースの教室:5限目「メタンハイドレート」―日本の技術者魂に触れる―

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ニュースの現場から、ビジネスに活きるヒントを見つけ出す連載コラム「ニュースの教室」。
5限目となる今回は「メタンハイドレート」。
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2月14日朝からメタンハイドレートの採掘試験に向けた作業が、
愛知県沖で始まったと各紙が報じた(後に悪天候で1日順延)。
商用化できれば日本は100年分のエネルギーを持てるという。
このニュースを手がかりに日本の技術者魂に手を伸ばしてみる。

各紙のニュースの要点をまとめると以下の通りだ。
1.メタンハイドレート試掘の事業者は経済産業省、作業者は独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構。
2.メタンハイドレートの海洋産出試験に向けた掘削作業は、愛知県の渥美半島沖で3月下旬まで継続する。
3.海底に井戸を設置して来年1-3月に世界初となる海洋産出試験を実施する環境を整える。
4.メタンハイドレートを含む地層は海面から約1260メートル下に存在する。海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」のやぐらから、先端にドリルをつけたパイプを海底まで下ろして掘り進める。

新聞を離れウィキペディアでメタンハイドレートを調べてみた。
メタンハイドレートはメタンが低温高圧で水分と結びつき、
氷のように結晶化した物質で「燃える氷」とも呼ばれるそうだ。
カナダで永久凍土から採掘したことはあるが(日本も参加)、
埋蔵量が多い深海から採掘したのは日本が初めてだという。

深海から低温高圧のメタンハイドレートを取り出せても、
商用化には立ちはだかる問題が山積している。
周辺技術の開発もコストも利権の問題も一筋縄ではいかない気配だ。
しかしそれでも、ここにはさまざまな夢が殺到することだろう。

日本が採掘計画に着手したのは2001年のことだそうだが、
記憶に鮮明なのは海洋冒険小説『深海のYrr(イール)』だ。
メタンハイドレートを住処にする海洋生物を描いた小説で、
04年にドイツで発表され、08年に早川書房から出版された。

1.2001年、メタンハイドレート採掘計画スタート
2.2004年、フランク・シェッツィング『深海のYrr』出版。
3.2012年、メタンハイドレート採掘試験スタート。

時系列にすれば空想と現実との時間距離が短いことがわかる。
関連して思いついたことをもう一つ並べてみる。

1.1870年、ジュール・ヴェルヌ『海底二万海里』出版。
2.1970年代、各国が深海探査に乗り出す。
3.2012年、メタンハイドレート採掘試験スタート。
4.2012年、「江戸っ子1号」8000mの深海で潜水(予定)

19日のNHK「サキどり」で紹介された「江戸っ子1号」は、
東京下町のいくつかの町工場が高度な技術を結集させ、
無人深海探査艇を製作して深海に送り込むプロジェクトだ。

「江戸っ子1号」は東大阪の下町工場がかかわった人工衛星、
「まいど1号」のニュースに触発されてスタートしたという。

「まいど1号」といえば思い出すのは『下町ロケット』(小学館)だ。
2010年に出版され、翌年直木賞を取った池井戸潤の小説。
主人公である町工場経営者、佃航平の言葉が印象的だった。

「俺はな、仕事っていうのは、二階建ての家みたいなもんだと思う。一階部分は、飯を食うためだ。必要な金を稼ぎ、生活していくために働く。だけど、それだけじゃあ窮屈だ。だから、仕事には夢がなきゃならないと思う。それが二階部分だ。夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない」

文●楢木望
ビジネスエッセイスト/ライフマネジメント研究所所長
『月刊就職ジャーナル』編集長、『月刊海外旅行情報』編集長を歴任。その後、ライフマネジメント研究所を設立、所長に就任。採用・教育コンサルタント、就職コンサルタント、経営コンサルタント。著書に『内定したら読む本』など。