インフルエンザが大流行している。A型が治った人が、すぐにB型にもかかって半月近くも続けて休む人もいるという。「自己管理がなっていない」と言う人もいるが、普段から十分な休養も取れていないのに感染した人を責めるのは酷ではないか。

ある会社では、体調不良で当日休む連絡方法を「電話」に一本化しようとしたが、部下が言うことを聞かずにメールで連絡してきて困るという。

工場長「電話連絡じゃなければ欠勤にするぞ」

――複数の工場を持つ製造業の人事です。先日、ある工場長から相談がありました。有給休暇の当日申請を、メールで送ってくる社員が増えているというのです。

昔は始業直前に電話連絡を入れるのが普通でしたが、特に若い社員は普段の連絡にメールを使うことが多いせいか、会社への連絡もメールで済ませているというわけです。

工場長は、本人の体調や様子の確認という目的もあるので、「電話連絡」の原則を徹底し、それを破ったら欠勤扱いにすると工場内で周知しました。それでもメールで送ってくる社員がいたので、出社後に呼んで注意したところ、

「もう具合が悪くて悪くて、電話どころじゃなかったんですって。メールの何が悪いんですか? 会社が認めようが認めなかろうが、行けないものは行けないんですよ。…どうぞ欠勤にしてください。もう、まったく社員の締めつけしか頭にないんだから」

と逆ギレされてしまったそうです。

それでも工場長はひるむことなく、「メールなんてない時代には、みんな電話してたんだからな」と言って、本社の人事部に「うちの工場だけでなく、全社の共通ルールにしてもらうしかない」と連絡をしてきたわけです。

工場長の言い分も分かるのですが、メールという新しい手段ができたんだから、それを使っていいという考えも否定できない気がします。全社ルールにすることに問題はないでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
メールの当日申請でも問題ない職場はあるはず

工場長がメールでの申請を禁止するのは、有給休暇取得のハードルを上げる意味合いが強いのではないかと、うがった見方をしてしまいます。欧米には年次有給休暇とは別に「シックリーブ」という病欠用の有給休暇が使えますが、そのような制度がない会社が、通常の有給休暇も十分に取らせないまま当日申請も断固として認めない、というのは会社の横暴とも言えるのではないでしょうか。

今回のケースが製造ラインであれば人員の確保などの制約はあるのでしょうが、仕事の裁量と責任が個人に重くのしかかっている他の仕事においては、状況次第で柔軟に「当日申請」しやすくする方が、社員の健康管理とモチベーション向上につながると思われます。

また、有給休暇の申請がメールのみではいけない合理的な理由とは何でしょうか。健康状態の把握であれば、メールで自己申告させることもできるはずです(電話口でわざとらしく「コンコン」と咳をさせる手間も省けます)。代替体制も事前にルール化して、メールで知らせてもらうことは可能です。「当日申請になった理由」「対応方法(医療受診の可否など)」「今後の見込み」などをフォーマット化することでカバーできることも多いはずです。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
電話申請を原則とするルールを作ることは可能

有給休暇の申請手段は法的に定められていないので、基本的にメールでも電話でも認められます。しかし、メールのみではいけない合理的理由があれば、電話連絡をルール化することは可能です。職場によっては、社員の健康状態の把握や、代替体制の確認など、電話でやりとりした方がよいケースはあると思います。

ただ、電話申請でなかったからといって、いきなり欠勤控除で減給するのは慎重にすべきです。確かに有給休暇は事前申請が原則で、当日申請の場合に「欠勤から有休に振り替える」かどうかは会社の裁量です。とはいえ、今回のように体調が極端に悪いなどの不可抗力もありますし、有休消化率の低い職場で欠勤にすれば社員の強い反発も予想されます。いくつかの労働基準監督署に確認してみましたが、「問題ない」という意見と「厳しすぎるのではないか」という意見に分かれていました。

実務的には、基本的なルールを定めつつ、守らなかった場合には出社後に社員の事情を聞き、必要に応じて注意指導の対象とし、度重なるようであれば欠勤のうえ戒告などの処分をするという運用にしてはいかがでしょうか。



(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。