「自分の頭で考えること」のデメリット

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 ベストセラー『地頭力を鍛える』の著者であり、ビジネスセミナーの人気講師でもあるビジネスコンサルタント・細谷功さんが講師を務めるクラウドBOOK『細谷功の「思考の積み木」』(NTTプライム・スクウェアのコンテンツモール「Fan+(ファンプラス)」にて配信中)。この動画、テキスト、図表を格納したコンテンツは、私たちが普段何気なく行っている“考える”という行為がどのように成り立っているのか分解し、“考える”ことを構成している要素や、その組み合わせ方までを解説するなど、思考というものを徹底的に分析していく。
 後編となる今回は、企業の入社試験などでも出題されることのある「フェルミ推定」について、その本質を聞いた。

―第2号で触れていた「フェルミ推定」が特に興味深かったです。ビジネスパーソンがこれを学んでおくことのメリットを教えていただけますか。

細谷「フェルミ推定は、単にややこしい計算をするものだと捉えられがちですが、普段やっている“考える”ということは、すべてフェルミ推定でやっていることと同じです。
何の仕事をしていようが、仕事をしていなかろうがやることは同じで、手持ちの情報が少なくてもとりあえず結論を出してみるとか、それらを論理に繋げて因果関係を見てみるとか、漏れがないように全体を網羅して考えてみるというところに繋がってきます。
だから、議事録を書くでもいいですし、新しい企画を立てるのでもいいですし、何にでも使えると思います。“考える”ことに含まれる様々なものがフェルミ推定には入っているので」

―情報が少ないなかで結論を出してみるというのは、日本の学校教育を受けてきた人にとってはすごく勇気と思い切りがいることではないですか?

細谷「そこが一番の訓練のしどころかもしれないですね。フェルミ推定は例えば、“アメリカの一日のピザの消費量は何枚か?”というような実際に調査するのが難しくて正解がないような問題を、いくつかの手掛かりを元に推論して短時間で概算すること。どうせ誰も正解をわかってないに違いないと思えば、何をやっても恥ずかしくないという感覚であれば、勇気を持って自分の考えから答えを導き出せる。そういうこともあって、学校教育を補完するという意味でもいいのかなと思いますね。現にフェルミ推定はアメリカの学校教育でも用いられています。まして“詰め込み主義”だと言われている日本の教育にフェルミ推定を取り入れることには、思考力を養成するためにも非常に価値があるのではないかと思います」

―“考える”ということに関して、今の若い世代に欠けている点や長けている点がありましたら教えてください。

細谷「ある程度やり方が決まっているものを正確にこなす能力はすごく高いのですが、そこからはみ出していくことには躊躇する。これは若い世代がということではなく日本人全体に言えることだと思います。
島国だということも影響しているのかもしれませんが、ある境界を決められて、その境界の中を磨き上げる能力って、日本人は突出していると思うんですよ。でも、何もないところに境界線を引くとか、今ある境界を壊すというところは弱い。
かといって、他の国の人は強いかといったらそうでもないんですけどね。今見えているものから発想するというのは人間にとって当然のことなので。だからこそ、それを破るのは難しいんです。
アメリカ人の方が“境界を壊していける”人が多いと思われがちですが、それでも所詮は5%とか1割とかそのくらいの割合だと思います。すべての人が枠を壊し始めると秩序がなくなってしまいますから。ただ、少なくとも今の日本には“境界を壊す”人の割合が少なすぎると思いますね」

―考える力を養うために日常生活でどのようなことをすればいいのでしょうか。

細谷「とにかく人と違うことをやろうと思っている人とそうでない人では、第一歩からして大きく違うような気がしますよね。人と同じことをやるのは考えなくていいですし、なぜやっているのか聞かれたら“みんなやっているから”と答えればいいわけで、理由がいりません。
だから、まず人と違うことをやろうと思えるかどうかというのが大きなポイントのような気がします。
人と違うことでもいいですし、去年と違うことをやろうとか、前回と違うことをやろうということでもいいと思います。
同じことは一通りしかないですが、違うことは無限にあります。その中から最適だと思うどれかを選ぶという段階で、すでに“考える”というステップが出てきます」

―自分の頭で考えることができるようになることのデメリットについて著書で書かれていますが。

細谷「世の中の理不尽なこととか、見えない方が幸せなものが見えてきてしまうことでしょうか。それをいちいち指摘していると人に嫌われますから(笑)
先ほどお話しした“仮説思考”は因果関係を考えることで、つまりは『なぜ?』ということなんですけど、会話の中で何度も『なぜ?』と言うと嫌われるんですよね。
また、人と違うことをやろうとすることは“自分だったらそうする”“人がやっているものよりもっといいやり方がある”と考えることで、言いかえると物事を疑ってかかるということですから、いい性格とは言えないでしょう。だから、人に好かれることとはトレードオフの関係なのかもしれません。
でも、常に人と違うことをやる必要もない。リラックスしたい時は人と同じことをやればいいわけです。そのバランスは大事なのかなと思います」

―2月22日、29日(共に水曜)に『思考の積み木』の公開講義をされるとのことですが、その内容を少しだけ教えていただくことはできますか?

細谷「1回目は、先ほどの“積み木”の話に出てきた3つの思考力(仮説思考力・抽象化思考力・フレームワーク思考力)を別の切り口で組み合わせてみたらどうかというのがテーマです。
2回目は“イグノランスマネジメント”。『無知から発想しよう』という話です。人間年を取ると世の中のことが分かっているような気がしてきてしまうものですよね。確かに20代の人より30代の人の方が物事を多く知っている。ただし、本当に知らなければいけないことを分母とすれば、その差はたいした差ではありません。人の10倍物事を知っていたとしても、知らなければいけないことはその1万倍くらいあるので、10分の1しか知らない人にどうこう言っても仕方ないんじゃないか。もっと知らないことに前向きになって、せっかく学んできたことを生かそうということですね。『無知から発想しよう』というのはそういうことです。
この講義は特に20代、30代の方をターゲットにしています。知らないということがある意味で強みになりうるというのがメッセージかもしれないですね」

―最後に、ユーザーの方にメッセージをお願いします。

細谷「みなさんが自分なりに普段やっている思考法があると思うので、それと私の講義の内容を対応させて“異なるところはどこか?”というように見てもらえればいいですね。批判的に見てもらっていいと思うんです。本当に私が行っていることがいいのか、それとも自分がやっているやり方の方がいいのかというところを見てもらって、もし私の講義でやっていることの方がいいと思えたのなら、真似してもらってもいいと思います。
ただし、真似といっても手法を真似るだけでアウトプットは違うものにする。人と違うことをやるために、手法を真似するのはいいと思います。役に立ちそうなことがあればどんどん使っていただきたいですね」

※『思考の積み木』公開講義のお知らせ
学生&20代、30代のビジネスパーソンに向けた細谷功の黒板講義!
 ビジネスはもとより、人生を生きるうえで欠かせない「考える」という行為の質を大幅に高めるための「細谷的思考法」。就活・起業、ビジネスの個人的転機に、細谷氏の講義・著書が役立った、という意見も多数よせられる細谷功の公開講義を2月22日(水)、29日(水)の2回にわたって開催します。
詳細はこちら(http://www.akizero.jp/archives/1257)


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