朝鮮学校の授業料無償化は早期実現を

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国会を開くのに、一日あたりでどれだけのお金がかかるのか。概算してみると、議員や秘書の給与や諸経費で、議員一人あたり20万円。そして、衆議院(480人)と参議院(242人)の定数を足して20万円をかけると1億5000万円弱。さらに、国会の運営費用で一日あたり1億5000万円。くわえて、2011年度の政党助成金の総額は約320億円であり、これを日割りにすると1億円弱。しめて約4億円が、国会を一日開くためのおおまかな費用となる。

その国会が一日半も空転した。政府による高校授業料の無償化に関する答弁に自民党が反発したからだ。ようは、昨年8月に民主・自民・公明で取り決めた三党合意のうち、無償化の「検証」が行われていないことについて自民が問いただしたところ、「検証」をしていない政府がのらりくらりとした答弁をしたため、自民がへそを曲げただけの話である。

高校授業料の無償化については、誰がどう考えても歓迎すべき政策の一つであるにもかかわらず、そのすばらしい政策が原因となって国会が空転し、6億円もの税金が無駄づかいされたことに憤りを感じずにはいられない。民主党の怠慢には呆れるが、自民党の気の短さにも不満が残る。いずれにしても、国会を空転させたらその責任を取ってもらうという意味で、議員に歳費を返金させるなど、対策を講じてもらいたいものである。

ところで無償化といえば、朝鮮学校の無償化がいまだに実現されていないのが気にかかる。2010年8月に専修学校や各種学校でも高等課程に類する課程をおくと認められる学校には無償化の審査が進められることになった。しかし、同年11月に北朝鮮による砲撃事件が発生し、朝鮮学校に対する審査手続きを停止。2011年8月にその手続きが再開されたものの、いまだに話は進展していない。

一方で昨年には、横浜市のホライゾンジャパンインターナショナルスクールは開設の前日に、コリア国際学園(大阪・茨木市)は各種学校に認定されて8カ月後に、それぞれ無償化されていると東京新聞が報じている(2012年2月15日付、「朝鮮学校 早く適用を」)。かたやあっさりと無償化が認められ、かたや審査をされたり中止になったり……。おかしな話である。

「北朝鮮はあぶない」などという陰謀論めいた議論に振りまわされて朝鮮学校の無償化が遅れているのだとすれば、馬鹿らしいとしか言いようがない。第一に、たしかに北朝鮮の情勢は不安定であり不気味な部分はあるものの、北朝鮮そのものと日本に滞在する在日朝鮮人で朝鮮学校に通う高校生を一緒くたにするような見方には問題がある。

第二に、その理由だが同記事に紹介されているとおり、政府による「教育基本法は教育内容への介入を禁じており、私立学校法で自由な宗教観や歴史観にもとづく授業が保障されている」。したがって、無償化が北朝鮮情勢に左右されていること自体、法的にもおかしなことだと言えるのではないか。

政府・民主党が朝鮮学校の無償化について、まるでコウモリのようなどっちつかずの方針を続けている原因が北朝鮮に反感を持つ一部の国民にすり寄るポピュリズムにあることは、少し考えれば誰にでもわかる。だが、民主党が一部の国民に媚びを売っている最中にも、在日朝鮮人の高校生は朝鮮学校で学んでいる。そして、同じ専修学校や各種学校でも、無償化が認可される学校とされない学校があることの矛盾に悩んでいることであろう。

繰り返すが、北朝鮮そのものと日本に滞在する在日朝鮮人で朝鮮学校に通う高校生を一緒くたにするような見方には問題がある。政府は、教育基本法や私立学校法の理念にもとづき、できるだけ早く朝鮮学校の授業料無償化を実現すべきだと筆者は考える。高校無償化は世界に誇れる制度だが、こんなことでつまづいていたら逆に世界の笑いものになってしまいかねない。

(谷川 茂)