■J2初年を迎えるチームの健闘を祈る

今季からJ2クラブが22チームになることを受けて、J2とJFLで入れ替え制度が導入される。J2下位2チームにJFLに降格する可能性がある。サポーターが新戦力であれこれ妄想を膨らませて胸を躍らせているこの時期に、降格するチームを予想するのは顰蹙を買いそうだが、開幕して10試合も消化すれば大まかな大勢は判明するもの。現実的にはJ2初年のチームは厳しい。いくら反町康治でも、アルディレスでも、厳しいものは厳しい。

先日、昨季FC東京でJ2を戦った今野泰幸(現G大阪)が「J2は甘くない」とどこかの記事で改めて振り返っていたが、繰り返すがJ2初年のチームは厳しいのだ。筆者は普段フィールドワーク的に栃木SCを取材しているが、09年時のJ2初年、栃木は18チーム中17位だった。19試合も勝てない時期があった。

かつて二度J1へ昇格させた実績があり、守備組織構築に定評のある松田浩も苦戦した。監督力だけでは厳しい。実績も何もないクラブがJ2初年からそれなりの戦力を確保することは困難だ。強化部も他Jクラブとのパイプに乏しいからだ。ちなみに直近3年のJ2初年を戦ったチームの戦績は、09年(18チーム)は富山13位、栃木17位、岡山18位、10年(19チーム)は北九州が年間僅か1勝の最下位、11年(20チーム)は鳥取19位という結果だった。今回の入れ替え制度に当てはめればJ2初年を迎えたチームは満遍なく降格候補だ。

■アルディレス監督は? 反町監督は? 今季のJ2の楽しみ方

JFLへの降格がなかったこれまでのJ2であれば、長期的視野でチーム強化を目算でき、ゆえに多少結果が出ずとも悠長な構えでいられた。富山で安間貴義がJで珍しい3−3−3−1を試行し、京都で大木武が自身の頭の中にある理想に腰を据えて取り組むだけの猶予があった。昨季富山は序盤下位に低迷していたが、シーズン中頃になって安間監督が「地域を背負って戦っている以上、自分の理想だけを追い求めるわけにはいかない」と記者会見で神妙な面持ちで話す姿を筆者は目撃している。

その後富山は3−3−3−1の陣形に微修正をほどこし、終盤に向けて尻上がりに調子を上げた。また京都が天皇杯で猛威を振るったことは周知のとおり。リーグ戦でも終盤に6連勝を飾った。だが京都もまた昨季序盤は下位に低迷していたのだ。シーズン中に3バックから4バックへと修正し、大木京都は若手をミックスさせながら、掲げた理想を見事に具現化して結果まで残した。筆者は安間・大木両氏の理想への挑戦が心地良かった。ある意味それがJ2の楽しみ方のひとつだった。

両氏が当初から二の足を踏むことなく、頭の中に温めていたのであろう理想に挑戦できたのも、J2に降格がなかった点が多少は貢献しているのだと推測する。筆者はリーグ戦に緊張感を生むためにJFLとの入れ替え制度は必要だと思う。だが、もし下位低迷という現状から逃れようと勝利至上主義のサッカーが増えるのならば、正直萎える。アルディレスはどうだろう。反町康治はどうだろう。両氏とも自身の信念は貫くはずだ。今季はその信念と現実との、熾烈なせめぎ合いや葛藤が垣間見られそうで、傍観者としてズルイかもしれないが、それがJ2を見る際の密かな楽しみである。

■「JFLの門番」SAGAWAの牙城

前置きが長くなったがJ2とJFLの入れ替え制度の概要を記しておこう。

JFLの上位2クラブがJ準加盟クラブだった場合は、J2最下位クラブが自動降格し、21位のクラブが入れ替え戦を戦う。JFL優勝クラブのみが条件を満たした場合は、J2の最下位は自動降格し、21位は残留する。JFL2位だけが条件を満たした場合は、J2の21位は自動残留、最下位が入れ替え戦に回る。JFL上位2クラブとも条件に満たない場合には、J2下位2クラブは自動残留する。