巨大噴気らしき現象が確認された富士山の東側斜面に、直径20m〜50mの黒い穴が点在しているのを発見。ここの雪が溶けている理由は何か?

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 1月25日、富士山の東側斜面から高さ1000mもの蒸気が噴き上がっていたとの報告があり、噴火の前兆現象ではないかとの憶測を呼んでいる。

 有名な女性占術研究家であるマギーさんが新幹線の三島駅付近で撮影した写真には、快晴の青空をバックに、富士山の斜面のとある一点付近にだけ細長い雲のようなものが見える。もちろんこれだけでは「噴気現象」と決めつけることはできない。ただ、マギーさんはこの10年ほど週に1〜2回は新幹線で東京−名古屋を往復しており、いつも富士山を見てきた。その彼女が、「快晴の山腹から、あれほどの速さで大きな雲が立ち上がるのを見たのはこの10年間でなかった」と本誌の取材で語ったことから、単なる見間違いと片付けるのも早計だ。

 さらに撮影の3日後の28日から、富士山の北東約30kmを震源とする群発地震が発生。はたして富士山の東側で何が起こっているのか。取材班が静岡県小山町から東側斜面を望遠レンズでくまなく調査したところ、冬季の富士山では不可解と思えるような箇所があることが判明した。

 それは山腹の真東、標高約2200mの「須走(すばしり)」の急斜面にある。周囲が雪をかぶった山肌に、まるで月面のような直径約500mの円い輪郭が確認できた。さらにその周辺には、直径20m〜50mほどの大小10ヵ所以上の陥没孔が点在している。これは、マギーさんの証言ともピタリと重なる場所である。

 そしてその陥没孔からは、明らかに熱をもった無色の気体がかげろうのようにゆらぎ出ていた。冬季の東側斜面は昼間でも氷点下10度前後なので、その気体はたちまち白い蒸気に変わり、遠目には雲や雪を巻き込んだ風と見分けがつかなくなる。おそらく噴気量が多いほど、その区別はつきにくくなるだろう。

 長年、富士火山帯の研究に取り組んできた琉球大学名誉教授の木村政昭博士は、現在、東側山腹での噴火リスクが高まっていると言う。その上で、さらに気になる前兆現象があると主張する。

「その25日の大規模噴気が発生してから3日後の28日早朝には、これまで地震が少なかった富士山北東約30kmを震源にM5.5の強い地震が起き、それから2月初旬現在にかけて1時間おきの頻度で群発地震が起き続けています。最近の研究では、富士山のマグマだまりは周辺地域にいくつも潜んでいるという見方が有力。この群発地震は富士山のマグマ活動が活発になり、噴火が避けられなくなった証拠でしょう」

 また、木村博士が指摘した山中湖を挟んだ北東の群発地震域と、2003年から起こっている標高1500mでの噴気、今回の山腹噴気エリア、そして昨年3月15日のM6.4を皮切りとした山体直下型群発地震の震源域は見事に一直線上に並び、密接な連動性をうかがわせる。

 これ以上、活動が活発にならないことを願うばかりだ。

(撮影/五十嵐和博)

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