MLBのストーブリーグの薪は、そろそろ熾火になりつつある。灰をかき上げて火を落とす寸前だ。しかし、まだ去就が決まらない選手がたくさんいる。今年は実績あるベテランが、路傍に立ちつくす姿が目立つ。松井秀喜、福留孝介もそんな顔ぶれに含まれている。

ニューヨーク・ヤンキース=NYYが、DHに誰を補強するのか。ここ数日で決定されることだろう。先日はラッセル・ブラニャンとマイナー契約。シアトル・マリナーズ=SEAで4番を打ったこともあり、日本人にはなじみだ。ブラニャンは通算194本塁打。松井秀喜(173本)より多いが、格が違うので影響がないようだ。
ライバルは、ラウル・イバニェス、ジョニー・デーモン。3人の外野手(DH)は、一長一短がある。いずれも打撃は衰えつつあるが、有力チームの主力として活躍した。昨年の成績の比較。

Masui-20120210


松井はここ2年、成績が下がり続けているの。スランプが年々が長くなっており、シーズン通して起用するのは難しい状態だ。打率は低いが、イバニェスが最有力ではないか。

もし、NYYからオファーがなければ、マイナー契約の線も出てくるのではないか。このくらいのベテランになって、スプリングキャンプから本気を出さなければならないのは大変だ。

さて、福留孝介は、ニューヨーク・メッツ=NYMとの契約が秒読みだと報じられている。ライバルと目されたリック・アンキールがワシントン・ナショナルズ=WASとマイナー契約を結んだからだ。

打者としての福留は、多くを期待されない存在になっている。平均すれば打率.260、本塁打12本、54打点。リーグの打者の平均値を少し下回っている。しかし、福留はIsoD(四球による出塁率)が.130と非常に高く、OPSは.760に達している。また、守備範囲が広く判断が的確な外野守備も評価されている。

そういう点ではJ.Dドリューなどと同様、玄人受けのする選手なのだ。しかし、1450万ドルという高年俸がネックになっている。年俸は大幅に下がるだろう。NYMの外野陣。

fukudome-20120211


福留は4番目をスコット・ヘアストンあたりと争うことになろう。ルーカス・ドゥーダを除いて30代半ばだ。ジェイソン・ベイは近年福留より成績が悪い。彼にとって代わる可能性はあるだろう。

意外だったのは、中日復帰のニュースがほとんど聞かれなかったこと。昨年春には、NPB復帰のうわさが出たが、今年は全くない。名古屋近辺でトレーニングをしているようだ。復帰の意思があれば中日はほっておかないだろうから、本人の意思が固いのだろう。

不本意な成績だという意識もあるだろう。不完全燃焼という思いもあろう。同時にMLBというそのレベルの高い世界に触れて、帰りたくないという思いも芽生えたのではないか。

NPB側は、まるで故郷の親が都会の息子に「仕事さねえなら、うちさかえってこ!」というような乗りだが、松井秀喜も福留孝介も自らの「夢」を完結させたい、という思いが強いのではないか。
MLBに挑戦した人でなければ分からない体験が、エリート野球人を変えたのだと思う。